値上がり益を再投資する複利運用は下落時に大きくマイナスにも
複利の罠もあります。複利運用もしくは再投資運用の場合、一定の運用期間中に得られた収益を元本に組み入れて、さらに次の一定期間を運用します。結果、運用期間を経るごとに、徐々に投資元本が膨らみ、効率よく資産が増えていくのですが、それは預貯金のように元本割れすることなく、右肩上がりで収益が積み上がっていく金融商品に限定された話です。
投資信託のような価格変動商品で、複利運用もしくは再投資運用を行うとどうなるでしょうか。
たとえば1万円から運用がスタートした投資信託の基準価額が1万1000円になりました。この時、①1000円の値上がり益を全額分配して元本を1万円に戻し、そこから2年目の運用を開始する、②1000円の値上がり益を一切分配せずに、1万1000円の元本で2年目の運用を開始する、という2つの方法で運用したとします。
2年目は残念ながらマーケットが大きく崩れ、運用成績は▲30%でした。この場合、両者の成績にはどのような影響が出るのでしょうか。まず①の場合は、1000円のリターンを除外した1万円の元本に30%の損失が生じるので7000円になりますが、1000円の収益はマーケット下落の影響を受けないので、トータルだと8000円です。これに対して②の場合は、1万1000円に対して30%のマイナスですから、7700円になります。
複利運用もしくは再投資運用は、マーケットが右肩上がりの上昇を続けている時は、利益が利益を生むことで効率的なリターンが期待できるのですが、値下がりに転じると、元本に組み入れられた収益部分にもマイナスの影響が及んでしまうのです。
金融機関をはじめとして投資信託を勧める人たちは、投資初心者でも理解しやすいように、複雑な物事を単純化して伝えようとする傾向がありますが、それは時に誤解を生みます。平均リターンや、それを用いた複利運用、あるいは再投資運用のシミュレーションを用いて投資信託の有利さを説明された時は、それを頭から信じず、話半分で聞くようにしましょう。