〈前編のあらすじ〉

前夫に対し「この人と一生連れ添うことはできない」と感じ、離婚に向けてハードな節約でお金を貯めた相談者Aさん。

「親としての責任を果たしたい」という気持ちから、実際に離婚したのは子どもの独立後ですが、その結果、計画的な貯蓄にも成功し、そのお金で離婚後すぐに終の棲家であるマイホームを購入しました。

ただ、老後生活を見据えて不安なのは、大半が国民年金だけだという公的年金(前夫が自営業者だったため)。計算してみたところ、貯蓄や運用中の投資信託といった、Aさんの資産だけでも国民年金と生活費の差額は補填できるのですが、より盤石な老後資金計画を立てるためには、

・投資信託(毎月分配型投資信託)の見直し
・リバースモーゲージの活用

がポイント。後編では毎月分配金型投資信託の問題点やリバースモーゲージの注意点を解説していきます。 

●前編はこちら
 

毎月分配金型投資信託の落とし穴とは?

Aさんは、所有している毎月分配金型投資信託の分配金が好調であることから、より多く購入したいと考えていました。投資額が増えれば、受け取る分配金もより多くなると考えたのです。

しかし、FPの立場からすると、その想定はいささか“問題あり"と言わざるをえませんでした。

分配金を受け取ってもトータルではマイナスの可能性も

投資信託の分配金は、預貯金の利息のように元本に上乗せされるものではありません。投資信託の運用資産の一部を切り崩して、投資家に支払われるものです。そのため、支払った分配金だけ運用資産は目減りします。分配金を支払ってもなお、運用資産を減らさずに維持するには、常に支払う以上の収益を上げる必要があるのです。しかし、投資信託の運用には波があり、期待したとおりの収益が得られるとは限りません。分配金が出ていてもトータルの収支はマイナスで、資産が減っていることもあるというわけです。

運用コストが高め

一般的に毎月分配金型投資信託は、購入時手数料や信託報酬といった運用時にかかるコストが高い傾向にあります。保有時にかかる信託報酬が年2%前後のファンドも少なくありません。投資元本100万円の場合、年2%の信託報酬であれば2万円が運用資産から差し引かれるのです。10年間保有すれば20万円となり、軽視できないコストと言えます。

分配金を受け取らずに複利効果を狙う

そこで、長期で資産を育てるのならば、分配金の支払われる頻度が少なくてローコストのファンドで運用していくことをおすすめしました。

資産形成に欠かせないのが複利運用という考え方です。複利運用とは運用の利益を受け取ってしまわずに元本に組み込んでいくことで、長期的に資産を増やす効果が期待できます。

老後、取り崩す局面になったら、運用を続けながら必要な分だけを解約していくようにすれば、残った資産の寿命も延びることになるのです。たとえば、1000万円を年3.0%で運用しながら毎月4万円ずつ取り崩すと、32年8カ月受け取れます。