「投資信託で運用すると、これだけ有利にお金を増やせますよ」ということを、金融機関などが個人向けにアピールする際に用いられるのが、「平均リターン」の考え方です。たとえばこんなふうに……。

右肩上がりの理想的な曲線で描かれる「平均リターン」の問題点

「年平均リターンを5%と仮定して、100万円を30年間、再投資運用した場合、324万3397円になります」。または、「年平均リターンを5%と仮定して、毎月2万円を30年間、積立投資した場合、1664万5173円になります」というような話ですね。
これは、証券会社などの積立投資シミュレーターなどでも用いられている考え方で、この平均リターンで運用し続けると、こんなふうにお金が増えますよということが、右肩上がりの曲線カーブで描かれたりもします。

これを見たら、初めて投資信託を購入する人はどう思うでしょうか。恐らく、「投資信託は預貯金に比べて随分と高いリターンが期待できるんだな」と思うのではないでしょうか。でも、平均リターンの考え方はあまり現実的ではないので、シミュレーションによって算出された金額については、ある程度、割り引いて考える必要があります。

平均リターンの考え方を簡略化して言うと、こんなイメージです。
「100万円を10年間運用したら150万円になった。10年間で50万円の利益だから、1年あたりの平均は5万円。投資金額は100万円なので、1年あたりの平均リターンは5%」。

確かにその通りなのですが、これをそのまま投資信託のような価格変動商品に当てはめるのは、いささか無理があります。そうであるにも関わらず、平均リターンの考え方を用いて投資信託の有利さを説明する金融機関が多いのは、個人の預貯金志向が強いからです。