米国で電気自動車(EV)開発が活気を帯びている。かつては新興メーカーと呼ばれていたテスラはEVの2021年新車販売で世界トップシェアを誇り、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターも急激なEVシフトを進める。リヴィアン・オートモーティブなど新興メーカーも巨額の資金調達をしてEV事業を推進している。2021年にバイデン政権が誕生し、脱炭素化に舵を切る中、米国各社のEV戦略を探った。
日本の上場10社の時価総額をしのぐテスラの実力
1兆1284億2495万ドル(139兆3271億9278万円)ー。3月28日時点でのテスラの時価総額だ。これは日本企業の時価総額上位10社の総額(約138兆円、3月28日時点)に匹敵する数字だ。米国の2大自動車メーカーの時価総額はGMが642億5260万ドル(7兆9333億0114万円、同日)、フォードが655億6970万ドル(8兆0959億2401万円、同日)であり、時価総額ではテスラの足元にも及ばない。ちなみに日本のトップはトヨタ自動車で36兆8881億8700万円(同日)だ。時価総額には、いわゆる期待値も含んだ数値となっているため、一概には比較できないがグローバルの自動車業界でもテスラは一山も二山も飛び抜けている。実際に21年の世界EV販売はテスラがトップだった。市場調査会社のTrendForceによるとテスラの世界の総販売台数は約93万台を超え、市場シェアは20.2%で2位(9.5%)とダブルスコアでトップを守った。
全世界の交通・輸送部門から放出される温室効果ガス(GHG)のうち、米国の排出量は世界最大だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)のレポートによると18年の同部門における国・地域別GHG排出量は米国は1.76ギガトンで2位の中国(917メガトン)の2倍近くに達している。さらにトランプ前政権ではGHG排出規制が緩和されていた。一方、バイデン現政権になると、50年のカーボンニュートラルと30年のGHGネット排出量の50~52%削減(05年比)を掲げるなど政権発足当初から、より厳しい自動車の排ガス規制の制定に取り組んでいる。さらにはEV振興に巨額の予算を付け、消費者への買い替えなどを促している。そういった中、各社はどのようなEV戦略を取っているのかを探っていく。