米国市場を左右するピックアップトラックのEV化

各社はスポーツ多目的車(SUV)などのEVをすでに発売している。ただ、「米国×自動車」を連想すると大型のアメ車を思い浮かべる人も多いのではないか。アメ車は車体が重く、排気量が多いため、一般的に燃費は悪いとされてきた。ただ、大型車は米国の年間新車販売で常に上位を占める。米国で人気の大型車のEV化はどうなっているのかをピックアップトラック型で比較してみる。テスラは19年に「サイバートラック」の車両デザインを公開し、21年に納車を開始すると予告していたが、新工場の稼働が遅れ、現在は23年の量産開始を目指すとしている。米国のネットメディアによると21年5月時点で同車の予約件数は100万台を超えたとされており、価格は3万9900ドルからとしている。

GMは、先に述べたように22年1月にピックアップトラックの生産能力の増強を発表。同月に米国で開催されたテクノロジー見本市「CES」でシボレーブランドの主力ピックアップトラック「シルバラード」のEVモデルを発表。23年に発売を予定し、フル充電時の航続距離は約640kmで価格は3万9900ドルからとなっている。10年に廃止された大型車「ハマー」もEVとして生産が再開されている。

フォードは、21年5月に同社主力のピックアップトラック「F- 150」のEV「F-150ライトニング」を発表した。1回の充電での航続距離は標準モデルが約370km、上位モデルが約483kmとなっている。発表直後から予約が殺到し、すでに15万台以上の予約があり、1月には同車の年間生産能力を、当初計画のほぼ2倍となる15万台に引き上げると発表している。価格は3万9974ドルからとなっている。

各社は、力を入れるEV型のピックアップトラックを22~23年ごろに予定しているが、すでに納品を始めた米国メーカーがある。それは21年11月にナスダック市場に上場し、テスラに次ぐ米国発のEVメーカーとして注目されるリヴィアン・オートモーティブだ。上場直後は時価総額でGMにほぼ並び、注目を集めた。同社が手掛ける同型EV「R1T」は21年9月に出荷を始めた。一充電あたりの走行距離は、バッテリーとモーターに応じて418~643kmと同社のホームページで紹介している。価格は6万ドルを超え、ライバル企業よりも割高になっている。また同社の株式の20%を保有する米アマゾン・ドット・コムから配達用EV10万台を受注している。さらに21年12月には50億ドルを投資してジョージア州にEV工場を建設すると発表。24年から同工場で生産を初め、年間最大40万台の生産が可能となる見込みだ。

さらにテスラで「モデルS」を設計したピーター・ローリンソンCEOが率いるルーシッド・モーターズはEV型の高級セダンを発表するなど、新興メーカーも開発を急ぐ。さらには世界の時価総額でトップの米アップルもEV事業に参入するというニュースが再三飛び交っており、今後、テスラやGM・フォード以外の新興メーカーも参入して米国メーカーのEV開発がさらに進みそうだ。