iDeCoは今年(2022年)5月と10月に施行される大きな改正によって加入可能になる人たちが一段と増えます。そんな前向きな制度改正の中、実はiDeCoにこれから加入するのは見合わせた方よいと思う方がいらっしゃいます。今回はそれを取り上げてみたいと思います。

新規のiDeCo加入を見合わせた方がいい人とは

私が、これからiDeCoに入ることについて注意喚起申し上げたい方というのは、充実した確定給付企業年金がある会社にお勤めの方です。確定給付企業年金(以下、「DB」という)というのは、文字どおり「給付」が会社のルールであらかじめ定められている会社の退職金制度のひとつです。大企業を中心に導入されており、加入者は現在約900万人います。そのDBの給付水準が、新卒で入って定年まで勤めあげると3000万円近いというような大変恵まれた方の場合、2024年12月以降、iDeCoの積み立てができなくなります。もう少し正確に申し上げると、iDeCoの積み立て枠がなくなります。その結果、その方々はiDeCoを通じて継続して老後資産を積み上げる道が断たれることになります。

これだけを読むと、2024年12月に行われる改正がひどいもののように感じられたと思いますが、この限度額の改正は多くの方にとっては枠が広がる喜ばしい改正なのです。iDeCoというのは、国の年金や会社の年金を補完する老後のお金を自分で上乗せする制度ですから、その掛け金限度額は、国の年金や会社の年金があまりない場合には多く、いろいろな制度がある場合に少なくなるよう定められてきました。実際の額は、それぞれの制度のあるなしによってどれくらいの水準が適切か、制度創設時、その後数度の見直しの都度、議論がなされて決められてきました。

DBという制度については、確定拠出年金の制度が創設される際に、当時、DB制度の代表格だった厚生年金基金給付水準から、DBの掛け金水準は企業型DCの限度額の半額程度ある、とみなすことになり、DBのある会社に勤めている方ならびにDBに準じる退職等年金給付のある公務員は、iDeCo掛け金が月額1.2万円と最も低い限度額が設定されてきました。しかし、一律企業型DCの限度額の半額(現在の限度額でいえば2.75万円)と評価されてきたDBの掛け金水準は、調べてみると実は1万円以下という会社(正確には規約ベース)が圧倒的に多く、9割以上の会社が2.75万円未満であったことからDBで実際に準備できる老後資金はそれほど多くないことが明らかになりました。そこで、それぞれのDB制度の掛け金水準を反映したiDeCo限度額にすることによって、過大に見積もられることよって不利な制度設計となっていた部分を是正する、これが2024年12月の限度額改正の主旨です。

2024年12月からは、それぞれのDBや退職等年金給付の掛金水準を反映した額と月額2万円の少ない方が限度額になります。この改正によって多くのDB加入者にとってはiDeCoの掛け金限度額が1.2万円から2万円に上がることになるのですが、ごく一部、先に挙げた充実したDB加入者の方だけが割を食うことになりました。