加入者教育は「誰も取り残さない」SDGs経営に不可欠

「加入者に届ける」という意味で、無関心層といわれる関心を持っていない加入者にどう情報を届けるかということは長年の大きな課題です。昔と違って人々が多様なライフプランで暮らしているだけに、老後のお金について関心を持つタイミングも様々です。関心を持つようなライフイベントが訪れた時を逃さず学んでもらえるように「継続的な情報提供」が加入者教育には欠かせません。加入者教育は制度同様にサスティナブルである必要があり、それを実行するには仕組化が有効であるようです。

会社によってその仕組みは様々です。毎年欠かさず、全員にe-ラーニングを履修させ、セミナーは希望者のみ参加としているところもあれば、年代別のライフプランセミナーや昇格研修の中でDCのことを取り上げ一人の社員が入社から定年までの間に少なくとも10年に一度はDCの運用について考える機会を提供しているところもあります。無関心な加入者にも定期的に老後のお金、DCの運用について考えるよう促す働きかけこそ、関心を持ったタイミングでしっかり学んでもらうことにつながると思います。

効果検証を繰り返しながら継続的に熱心に実施されている企業をNPO法人確定拠出年金教育協会としては「エクセレントカンパニー」という形で表彰をしてささやかながら応援しています。SDGs活動への関心が高まる中、DCの加入者教育は「誰も取り残さない」包摂性をもって退職後のシニア世代の生活資金問題を解決する取り組みとして、社会的に高く評価されるべきことだと思っています。

そして、企業型DCを導入しながら過去3年に一度も継続教育が実施できていない4割の企業においては、ぜひここからしっかり取り組んでいただきたいと思います。
※NPO法人確定拠出年金協会 企業型DC担当者意識調査2021より(https://www.npo401k.org/investigation/responsible/

効果的な加入者教育のために

企業型DCは現在退職金制度ではなく、福利厚生的な位置づけで導入されているケースも珍しくなくなってきており、加入者教育として事業主が対象者全員に伝え、必要な選択を行ってもらうべき範囲は一律ではありません。

今後、より効果的な加入者教育を実施していくには、原点に立ち返って、自社の企業型DCがどんな位置づけで、加入者全員に理解してもらい達成しなければならないことは何かを考える必要があると思います。

商品除外が法律的に可能になった直後の2019年に日立製作所は提示商品数を18本から9本に絞りました。この背景には、グループを含めた30万人以上の社員に、「自らの年金資産を運用してもらう」ことが可能なDC制度にするという目的がありました。資産配分が実行できるレベルまでは、制度も商品も資産運用についても誰も取り残さない形で伝えることが必要と考えたとき、分散投資が可能でかつ識別可能な商品数に絞ることが、加入者教育を全うする上で必要だったのです。制度運営の責務を果たすという覚悟を持った賢明な選択だと私は思います。

現在、各社で商品の見直しが進んでいますが、「加入者のために良い商品」という視点だけでなく、「加入者が理解出来て商品選択しやすいか」「事業主としてそれに足る加入者教育ができるのか」といった観点も踏まえて見直しを進めることが、事業主として加入者教育の責務を果たす上で欠かせないと思います。

2022年以降は、iDeCoとの同時加入など確定拠出年金を活用した老後資産形成の選択肢がますます広がり、企業年金・退職金・iDeCoをすべてトータルで情報提供していくことが事業主に求められるようになってきます。加入者にとっては企業型DCを核に、一般論ではない、自分が会社から受け取れるお金を職場で可視化できるようになっていくということです。

公的年金も2022年4月以降、スマホで手軽に試算できるWEBサイトがリリースしますから、現役世代が老後について自分事としてライフプランも立てられるような時代がそこまで来ています。職場での加入者教育の重要性は増すばかりです。

今後も企業型DCそしてiDeCoにかかわり続け、事業主の取り組みを支援したり,サポートに意欲のある団体との縁結びをお手伝いしたりしながら、制度の健全な発展を見守っていきたいと思っています。
 

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第4回 DCの加入者教育のこれまでとこれから

 

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