宝くじは損な取引。でも、楽しみは人それぞれ

宝くじは、投資の観点からみるとかなり損な取引だといわれる。当たる確率が絶望的に低いのも理由のひとつだが、もう少し専門的にいうと、“還元率”と“期待値”が関係している。

そもそも宝くじは、法律で「当せん金の総額は、その発売総額の五割に相当する額をこえてはならない(一部抜粋)」と決められている。つまり、還元率が50%を超えないようになっているのだ。

今回の年末ジャンボ宝くじは、発売総額が1320億円で賞金総額は659億9780万円となっている(22ユニット合計、宝くじ公式サイトより)。1ユニットあたりでみると、発売額60億円(1枚300円×2000万枚)に対して賞金額は29億9990万円だ。還元率は49.99%となり、発売額のほぼ半分が賞金として還元される。

要するに、1ユニットを丸々買えば全ての賞に当せんするが、それでも約半分しか返ってこないことになる。では残りの半分はどうなるのかというと、印刷代などの諸経費のほか、各自治体の公共事業等に使われる。

一方、期待値というのは1回の試行で得られる値の平均値のことで、全てのパターンとその確率の積を足し合わせることで求められる。宝くじの場合、1枚300円の投資に対して戻ってくる見込み額が期待値になる。今回の年末ジャンボ宝くじの1等から7等までの全ての賞金額と当せん確率を掛け合わせ、その値を合計すると、149.99となる。1枚300円あたりの期待値(リターン見込み額)は約149円で、還元率通りということが分かる。

このように、投資の観点からみると宝くじは明らかに損をする取引だといえるのだ。

そのため宝くじを買うという行為に否定的な意見を持つ投資家や資産家は多い。つい最近も、某有名人がSNSで宝くじを買う人を揶揄したところ、たちまち賛否が巻き起こってちょっとした炎上騒動になった。

もちろん、意見のひとつとしてそうした主張もあるだろう。しかし一方で、合理性や現実性などははなから無視して、あくまで“夢”として、娯楽のひとつとして宝くじを楽しむ人も多いに違いない。

6万円をつぎ込んだ友人は、ほろ酔いでこうも言っていた。「毎朝な、宝くじが当たって手を震わせながら驚喜してるところで目が覚めるんだよ。しばらくは『あぁ夢か』って脱力するんだけど、なんかそのあとは一日元気に頑張れるんだよな。そんなのも宝くじを買っていなければ味わえない感覚だろ」。そういうものかもしれないな、と妙に共感したのを覚えている。

大みそかまであと少し。かすかな期待に胸を躍らせながら毎日を過ごしている人も多いだろう。筆者もその1人だ。テレビCMをぼんやり眺めながら、正夢になることを願って今日も眠りにつく。

執筆/東大路左京

貯蓄0円生活を長年続けていたが結婚を機に資産形成に関心を持つようになり、現在つみたてNISAとiDeCoを中心に投資信託で着実に資産を築いている。大のヤクルトスワローズファン。ジャンルを問わずさまざまな媒体で執筆活動中。