長期投資の理想とは裏腹に、短期売買による解約の嵐という現実
そのため私が考えたのは、外資系の運用会社と組んで、外国籍の投資信託を設定するという方法でした。そこで当時、懇意にしていた米国の投資銀行、ベア・スターンズ社の子会社、ベア・スターンズ・アセットマネジメントと共同でルクセンブルグ籍の外国籍投資信託を設定し、それを日本の証券会社を通じて販売することにしたのです。
募集段階で順調に資金が集まり、運用がスタートしてからは成績も徐々に積み上がっていきました。
ところが、ここで大きな壁にぶつかりました。運用開始から半年が経つと、解約が増えて資金が流出するようになったのです。この流れを止めることは出来ませんでした。他の投資信託に乗り換えさせるため、運用開始から半年前後が経過して多少、運用成績が上がっている投資信託は、どんどん解約の対象になったのです。長期でじっくり資産を増やしていくなんてことは、どこ吹く風です。
こうなると、もうまともな運用は出来ません。毎日のように、解約資金を作るためにポートフォリオの中身を売却せざるを得ませんでした。長期投資の理想を追求するために参入した投資信託ビジネスでしたが、当時の証券会社は投資信託を販売手数料稼ぎの道具としか思っておらず、長期投資の資金は定着しませんでした。最終的には、運用から手を引かざるを得なくなったのです。
取材・文/鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)
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