債券の運用経験が長期投資の可能性を見出すきっかけに

その頃の私は、債券運用の担当者でした。それも日本国債だけでなく、世界中のグローバルな債券でポートフォリオを構築し、買った債券を長期的に保有し続ける「バイ&ホールド」型の運用を行っていました。そのため、日本株の運用現場は阿鼻叫喚の状態でしたが、私は相変わらずじっくりと世界の金利動向を眺め、債券発行体の信用力などを分析しながら、腰を据えた運用に没頭できたのです。この時くらいから、長期投資の魅力に少しずつ気付いていきました。

しかし、そのような時期も長くは続きませんでした。当時、私が運用していたのは法人資金だったのですが、企業の会計制度が見直されて時価会計が導入されたため、毎年決算のたびに評価替えを行い、損益を計上しなければならなくなりました。

こうなると毎年、運用の結果を求められるようになるので、10年くらいかけて結果を出せば良いなどといった悠長な考え方の運用は出来なくなります。法人資金では長期投資が難しくなりました。少しでも値上がりしたら利益を確定させ、逆に値下がりしたらさっさと損切りするということの繰り返しになり、運用がどんどん短期目線になっていったのです。それは株式運用だけでなく、私が担当していた債券運用も例外ではありませんでした。

当時、債券運用の経験を通じて、私は長期投資の考え方にひとつの確信を持つようになっていました。でも、法人資金では長期投資が出来なくなったので、新たに長期投資を可能にする資金はないかと探すようになりました。その時、個人の資金なら法人のような決算がないので、長期投資には向いているということに気付いたのです。

それまで投資信託という商品には全くといって良いほど興味が無かったのですが、この気付きをきっかけにして投資信託の可能性を探るようになりました。

でも、自分たちで投資信託会社を設立して新ファンドを設定するには、あまりにもハードルが高すぎました。当時の投資信託会社は免許制で、外資系も含む証券会社、銀行、保険会社など金融機関系でなければ設立できなかったのです。