マーコウィッツ氏:「現代ポートフォリオ理論」

1990年、投資理論に関する功績からハリー・マーコウィッツ氏がノーベル経済学賞を受賞しました。うち「現代ポートフォリオ理論」は、ポートフォリオ(資産の組み合わせのこと)におけるリスクとリターンの関係を明らかにしたものです。

現代ポートフォリオ理論は「分散投資」の有効性を示します。1つの資産に集中投資せずいくつかの資産に分散することで、リターンを大きく損なわずリスクを低減できると説明しました。この考え方は資産運用の中核となっており、多くの年金基金で採用されています。

例えば日本の年金積立金を運用する「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」は、国内外の株式と債券半分ずつに分散投資しています。またノルウェーの石油収入を運用する「ノルウェー政府年金基金グローバル」も、GPIFよりも株式比率が高いですが、株式と債券でポートフォリオを構築しているようです。

参考:GPIF 2021年度の運用状況ノルウェー政府年金基金グローバル All investments

私たちもリスクを減らして資産運用を行いたい場合、集中投資よりも分散投資を心がけるようにしましょう。

セイラー氏:「行動経済学に関する功績」

2017年、シカゴ大学のリチャード・セイラー氏がノーベル経済学賞を受賞しました。伝統的な経済学に心理学的な要素を取り入れた「行動経済学」に関する研究が認められたものです。

行動経済学は、私たちが非合理的な行動を取ってしまう理由を解き明かす分野です。ダニエル・カーネマン氏が行動経済学の代表的な理論「プロスペクト理論」を提唱し、2002年にノーベル経済学賞を受賞したことでも注目を集めました。この理論は、利益よりも損失を大きく感じてしまう行動を説明したものです。

行動経済学は私たちの投資に生かせるヒントがたくさんあります。例えばセイラー氏は自著『実践行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』において、ヒット曲の歌詞を引用し「テーブルについているときにお金を数えてはいけない」と述べました。これは「評価損益をいちいち確認するな」という意味です。

セイラー氏はプロスペクト理論を踏まえ、「利益と損失が同じ程度で起こっても、損失の方を苦しく感じるため、監視する時間が長くなるほど投資が苦痛になってしまう」と説明し、結果的に収益率が高い株式への投資が少なくなりすぎてしまう人が多いと指摘しました。

これを私たちの投資に生かすなら、「利益と損失を同じ程度に受け止める、それができないなら運用状況をチェックする頻度を下げる」といえるでしょう。投資に一喜一憂してしまう人は、セイラー氏の助言を参考にしてみてはいかがでしょうか。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。
AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。