アパート経営などの不動産賃貸業を行う際には「空き室」が発生して家賃が入ってこないリスクが心配です。

そんなとき、不動産業者がアパートなどを一括で借り上げて入居者へ転貸するサービス「サブリース」を利用すると、「家賃保証」を受けられて安定収入を得られるので、安易に契約してしまう方も少なくありません。

しかし、サブリースには大きな落とし穴があります。

今回はサブリースで失敗した佐伯さん(仮名、60代・不動産投資業)のケースをもとに、サブリースの危険性を学んでいきましょう。

なお正しくは、不動産オーナーとサブリース業者との契約は「マスターリース契約」といいます。サブリース契約は「サブリース業者と賃借人の契約」であって、大家と業者との契約ではありません。

一般的にはどちらも「サブリース」と呼ぶことが多いので、この記事ではわかりやすく、まとめて「サブリース契約」と表記します。

佐伯さん(60代・不動産投資業)のケース

佐伯さんはもともと会社員でしたが、現在は定年退職しています。在職中から行っていた不動産投資を今も続けていて、現在は専業の不動産投資家になっています。
以前から、所有しているアパートでしょっちゅう空き室が発生したり家賃を滞納されたりするのが悩みの種となっていました。

そんなとき、佐伯さんに、とある不動産管理業者が声をかけてきました。

サブリースのうまみ

業者が言うには、「空き室リスクや家賃不払いに悩んでいるならサブリースがおすすめ」ということでした。サブリースには以下のようなメリットがあると説明されました。

●家賃はサブリース会社が保証するので、契約後は空き室リスクの心配がない

●家賃の回収もサブリース会社が行うので、滞納家賃回収の手間もかからない

●サブリース会社が物件を管理するので、管理の手間も不要

●家賃は30年間保証される

「家賃保証と管理の手数料として、毎月の家賃から一定額が差し引かれる」と説明されましたが、「手数料を差し引いても毎月のローン返済額よりは高い金額が手元に残る」とシミュレーションされ、赤字にはならない計算でした。

佐伯さんは「そんな良いサービスがあるならぜひ利用したい」と思い、サブリース会社との契約書に署名押印しました。

ところがサブリースの契約後、佐伯さんが予想していなかった不利益がたくさん発生してしまったのです。