冥王星が謎多き理由は探索にお金がかかりすぎるから?

宇宙探査計画は、科学者間の激しい競争と政治的駆け引きの舞台でもあります。

開発から膨大な費用がかかる宇宙探査計画は、複数の研究者チームが探査計画を練り上げ、数々のプレゼンやコンペを経て、国の機関から予算を勝ち取るところから始まります。

宇宙開発は公共事業と同じように、国から予算を勝ち取らないと先へ進まないのです。

道路を作る、橋を架けるといった目に見えて役に立つような公共事業と比べ、宇宙開発は「本当に人類の役に立つのか?」という疑問が常につきまといます。

研究者チームは探査機や観測機器のコンペをいくつも勝ち抜かなければならず、一方で、予算を出す方の国の機関は、「膨大なコストをかけるだけの有益な探査結果が得られるかどうか」を審査します。

しかも、少ない燃料しか積めない惑星探査機が遠くの天体に到達するには、数年に一度の「スイングバイ」ができるタイミングを逃すと後がありません。
※惑星探査機が遠くまで行く時に惑星の重力を使って加速する方法

地球から遠すぎる冥王星の探査計画は予算があまりにも超過し、NASAも一度は及び腰となったようです。しかし、冥王星の研究者たちは諦めることなく、探査機のコストを削り、世論を盛り上げ、ニュー・ホライズンズの打ち上げにこぎ着けます。なお、ニュー・ホライズンズは打ち上げ費用だけで、約7億ドル(日本円で約800億円)かかっています。

そんな研究者の熱意もあって、打ち上げから9年が経過した2015年1月「ニュー・ホライズンズ」は冥王星の観測を開始し、このとき初めて人類は冥王星の表面の詳細な画像を見ることができたのです。

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夏の夜空には「夏の大三角」が輝いていますが、肉眼では見えないどこかの空には、たしかに冥王星が存在しています。冥王星は2021年の科学技術を持ってしても、未だに謎多き星――果てしなく広がる宇宙に浮かぶ「準惑星」の冥王星に、思いを馳せてみるのも良いのではないでしょうか?

 

執筆/もとむらはじめ
東京在住のWebライター。ゲームソフト開発のディレクターを経て、フリーのライターへ転身。金融経済メディアをはじめ、IT、建築、美容・健康、エンタメなど幅広いジャンルで執筆活動を行う。趣味は映画鑑賞、スイーツ食べ歩きなど。