・多数の日本人も被害? アメリカ市場を低迷させた巨大企業2社の倒産

“新聞離れ”で多くの新聞社が低迷する中、「日本経済新聞社」は堅調です。2021年12月期に大幅な増収増益となり、純利益は100億円の大台を突破しました。

【日本経済新聞社の業績】

※2022年12月期に会計方針の変更あり(2020年12月期は遡及前の値)

出所:日本経済新聞社 決算短信

日本経済新聞社の好調はデジタル事業の伸展があるとみられています。2023年1月で『日本経済新聞』の電子版有料会員数は82万人を突破しており、本紙朝刊の販売部数との合計(約247万)の3割を占めるまでに増加しました。

電子版の増加にはイギリスの有力紙買収によるシナジーが表れているとみられます。日本経済新聞社は2015年7月23日、「フィナンシャル・タイムズ・グループ」の子会社化を発表し大きな話題を呼びました。

1600億円で英『フィナンシャル・タイムズ』を買収

フィナンシャル・タイムズ・グループは、130年以上の歴史を持つ『フィナンシャル・タイムズ』を発行する企業です。特徴的なピンク色の紙面で知られる同紙は、1880年代に創刊された2つの金融専門紙が1945年に合併して誕生しました。

権威ある世界的な経済紙の1つで、それだけに日本経済新聞社による買収報道は驚きをもって迎えられます。全株式の取得費用は8億4400万ポンド(約1600億円)に上り、日本のメディア企業による海外企業の買収としては過去最大規模となりました。

日本経済新聞社は、フィナンシャル・タイムズがデジタル化で成功していることに注目し買収に踏み切ったとみられています。同紙は電子版の無料会員に月に数本まで記事を公開する「メーター制」を採用し、有料会員への導線を拡充してきました。買収時には電子版の有料会員数が全体の70%を占めるほどに増加しています。

【世界の新聞社の電子版有料会員数】
・ニューヨーク・タイムズ(2016年):155万人
・ウォール・ストリート・ジャーナル(2016年):96万人
・フィナンシャル・タイムズ(2017年):64万人
・日本経済新聞(2017年):50万人

出所:日本経済新聞社 日経電子版 50万人達成特設サイト

デジタル化は日本経済新聞社が目指す姿と一致しています。同社は2010年に日経新聞の電子版を創刊し、本格的にウェブメディア事業に進出しました。先行するフィナンシャル・タイムズが持つノウハウを吸収することで、デジタル事業を推し進めたい狙いがあったと考えられています。

近年はサービスの融合も進んできました。2023年3月にフィナンシャル・タイムズの翻訳記事をウェブ上で読める『NIKKEI FT the World』を創刊し、日経新聞の紙版や電子版の購読者へは割引価格で提供を始めています。