望遠鏡や観測技術の向上により「惑星論争」が激化

冥王星が1930年に発見された当初は、地球と同程度かその数倍の質量を持つ惑星と考えられていましたが、望遠鏡や観測技術が向上していくにつれ、実際にははるかに小さい天体であることがわかってきました。

1990年代に入ると、太陽系の外にも多くの天体の存在が確認され始めるようになります。1992年には、太陽系の他の惑星とは大きく異なる軌道を描く1つの小惑星が発見され、「1992 QBI」という仮符号がつけられます。

これ以降、1992 QBIや冥王星に似た大きさの天体が続々と発見され始めたことから、「太陽系外縁天体」という分類が考えられるようになります。さらに、1992 QBIの発見が引き金となり、冥王星も太陽系外縁天体の1つではないかという意見が有力になっていきます。

太陽系外縁天体に分類される天体は「惑星になりきれなかった微惑星」と考えられ、その1つに数えられる冥王星を「惑星」と見なすことに疑問を抱く声が高まっていくのです。21世紀に入ると、次々に太陽系外縁天体が発見され、その中には冥王星の大きさに匹敵する外縁天体も発見されます。

この発見は冥王星を小惑星として再分類する有力な根拠と見なされるようになり、いよいよ冥王星の惑星としての地位が危ぶまれることになります。

そして、冥王星にとって運命の日となる2006年8月24日、チェコのプラハで開催された国際天文学連合(IAU)総会で、惑星を再定義する議論が行われます。

総会では太陽の周囲を公転する天体を「惑星」、「準惑星」、「太陽系小天体」の3つのカテゴリに定義し、これまで惑星とされていた冥王星は準惑星へと再分類する決議がなされました。

この決議には少なくない反論もありましたが、当時の世界中のメディアが伝えたように、人々の間に「冥王星が惑星でなくなった」という認識が広まる結果となるのです。