個人マネーは本当に投資信託に向かったのか?

これは個人がETFのローコストに注目して、積極的に投資しているからでしょうか。

残念ながら違います。ETFを通じて流入した23兆8956億6700万円の大半は、個人マネーではありません。なぜ、そう断言できるのかと言うと、この資金流入が設定額から解約額と償還額を差し引いた数字だからです。

少し難しい話になりますが、ETFへの投資には設定による方法と、流通市場で買い付ける方法の2つがあります。流通市場で買い付ける場合、ETFは1~10口単位で取引できますから、投資金額も少額で済みます。それに対してETFを設定で購入する場合は、特定の指数を構成する株式バスケットを拠出しなければなりません。その株式バスケットは数万株以上になりますから、金額も高額になります。つまり設定によってETFを購入するのは、個人には資金的にも難しいため、機関投資家に限られてきます。

つまり、ETFを設定で買い付けるのは機関投資家であり、ETFを通じて流入した23兆8956億6700万円は、ほぼ全部といっても良いと思いますが、機関投資家のマネーなのです。

一方で、ETFを除く株式型投資信託の資金流入額は、おそらくかなりの部分が個人マネーであると推察されるものの、50カ月のなかで流入した資金の額は10兆4663億9300万円にとどまっています。つまり公募投資信託全体では、資金流入のかなりの部分が機関投資家マネーであると考えられ、「貯蓄から資産形成へ」が前に進んだとはとても言えない実態が見えてくるのです。