「投資信託協会が13日発表した6月の投資信託概況によると、1~6月期の公募株式投信の純資金流入額は3兆9827億円だった。集計可能な2002年以降で4番目の規模となり、15年(5兆1009億円)に次ぐ金額となった」。

この新聞記事(7月14日『日本経済新聞朝刊』)にあるように、国内で設定・運用されている公募株式投資信託への資金流入が順調です。日銀が6月25日に発表した資金循環統計(速報)の数字を見ても、2021年3月末の家計の金融資産残高は1946兆円で過去最高額を更新し、投資信託の残高も前年比で33.9%増という大幅な伸びとなったことが分かります。

いよいよ個人が本格的に「貯蓄から資産形成へ」と動き始めたということなのでしょうか。その数字の裏側について、少し考えてみましょう。

投資信託の残高が増えているのは資金流入のおかげ?

まず日銀の資金循環統計にある投資信託の残高ですが、対前年比の伸び率は2020年9月末が2.5%増、同年12月末が5.9%増で、2021年3月末が33.9%増ですから、まさに急増です。

ただ、この数字には理由があります。この残高は時価ベースで評価したものなので、資金の流入によって増える部分だけではなく、投資信託が値上がりして増える部分もあります。

昨年3月末といえばコロナショックによって株価が大幅に下落した時であり、そこから株価は現在に至るまで、大きく改善してきました。例えば日経平均株価は2020年3月末から2021年3月末までの1年間で、実に54.24%も上昇しているのです。

これだけマーケットが大きく改善すれば、仮に新規資金の流入が無かったとしても、投資信託の値上がり分だけでかなり残高が増えることになります。確かに、2021年3月末時点の投資信託の残高は前年同月比で大幅な伸び率となっていますが、これは純粋に新規資金が流入したというよりも、評価益によって押し上げられた部分が大きかったと考えるのが妥当でしょう。

つまりこの数字で、個人マネーが投資信託にシフトしているとは言えません。