不動産の個人間取引に潜むリスク

不動産会社を通さない「個人間取引」でも、それ自体は違法ではありません。しかし、Bさんのケースのように個人間取引には多大なリスクがあります。

ローンが組めない

まず個人間取引ではほとんどのケースで金融機関の住宅ローンを利用できません。

Bさんのように現金を用意して一括払いするか、相手と話し合って分割払いする必要があります。

しかし分割払いは売主に不利なので、渋られる可能性が高いでしょう。売主からすると本当に完済まで払ってもらえるのか不安ですし、途中で支払いが止まったら裁判などの手段をとらねばならないからです。

住宅ローンの団体信用生命保険に入れない

Bさんは購入資金を用意するために生命保険を解約してしまい、保険のない不安な状態に陥ってしまいました。

もしも住宅ローンを利用できたら「団体信用生命保険」に自動的に入るので、保険については万全の状態になったはずです。団体信用生命保険とは住宅ローンに付随する生命保険で、債務者が支払中に死亡したら、住宅ローン全額が保険会社から支払われるものです。

団体信用生命保険に入ったらこれまでの生命保険が不要になり、解約する方もたくさんいます。個人間取引をすると団体信用生命に入れたのに、Bさんは手数料を節約しようとして個人間取引したために、反対に保険を失ってしまいました。

登記に協力してもらえない

個人間取引の場合、相手がきちんと登記に協力してくれないケースが多々あります。

悪気がなくても「面倒だから」といった理由で書類を渡してくれないケースも少なくありません。そうなると、Bさんのように「他人名義の家」に居住し続ける状態になってしまいます。

ちなみに、今回はBさんが買う側の立場のケースでしたが、売主になった場合は、相手が代金を払ってくれないリスクを負うことになります。高額な不動産を売ったのに代金を払ってくれなかったら、多大な損害が発生するでしょう。

どちらのケースでも最終的に裁判をしなければなりません。多大な労力とストレス、経費がかかりデメリットばかりが大きくなります。

不動産の取引は宅建業者を通じて行おう

知り合いや親戚であっても不動産の取引は宅建士の資格と持つ不動産業者を通じて行いましょう。仲介手数料を節約すると、かえって大きなコストがかかってしまいます。

まして見知らぬ他人との取引は絶対に個人間で取引してはなりません。宅建士のチェックが入らない個人間取引は不動産詐欺に用いられるケースもあるからです。

親しい親子間で売買するケースのように「絶対的に信用できる特殊な場合」を除けば個人間取引をお勧めできるケースはありません。今後の参考にしてみてください。