少子高齢化で70歳まで働く時代へ

少子高齢化が止まらない現実を知ったうえで、私たちはライフプランをどのように考えたらいいのでしょうか。

2021年4月より「高年齢者雇用安定法」が改正されたのをご存じでしょうか。働く意欲がある高年齢者がその能力を発揮できるように、高年齢者の働きやすい環境整備を目指した法律です。前回2013年の同法の改正では、定年年齢を65歳まで引き上げることが義務化されましたが、今回の改正では、70歳までの就労機会確保の努力義務がうたわれています(70歳定年を義務付けるものではありません)。

こうした法改正にも、50年近くに渡る出生数の低下が関係していると思われます。今後、労働人口が減少の一途をたどる中では、働く意欲のある高齢者の継続雇用は貴重な労働力の確保となります。さらに、高齢者が65歳以降も働き続けて厚生年金を納め続ければ、公的年金の受給開始を遅くする人が増えるかもしれません。高年齢者雇用安定法の改正には、そんな思惑が見え隠れしているように思えてなりません。

日本人の死因の50%を3大疾病が占める

人口動態統計では、死因についても調べています。図表3「主な死因の構成割合(令和2年(2020))」によりますと、日本人の死因として最多なのは「悪性新生物(腫瘍)」で、全体の27.6%を占めています。2位が「心疾患」で15.0%、3位が「老衰」で9.6%、4位が「脳血管疾患」で7.5%となっています。3位の老衰を除いた3つの疾患は、いわゆる「3大疾病」と呼ばれるもの。この3つの死因で亡くなった人の割合は合計で50.1%に達します。

図表3.主な死因の構成割合

 

出所:厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)」

あわせて、図表4「主な死因別に見た死亡率の年次推移」を見てみましょう。今から約50年前は、死因のトップは脳血管疾患でしたが、この50年間で「悪性新生物(腫瘍)」と「心疾患」で亡くなる人が右肩上がりで増え続けていることに気が付きます。リスクの高い病気を知れば、対策も取りやすくなるというもの。健康診断や人間ドックをまめに受診し早期発見を心がけることが、暮らしの質の向上と、医療費の抑制にもつながります。

図表4.主な死因別にみた死亡率(人口10万対)の年次推移

出所:厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)」

75歳以上の「医療費窓口2割負担」が新設された意味

健康を維持することは、高齢期の生活の質の向上や、就労継続を可能にすることにつながるのはもちろん、これからは、医療コストの削減という点でも、いままで以上に意味を持つことになりそうです。

2021年6月4日に、75歳以上の医療費の自己負担割合を2割に引き上げる改正法が国会で成立しました。これまで、75歳以上の医療費は2段階制となっていて、ほとんどの人が1割負担、現役並みの所得(単身で年収383万円以上)がある一部の人が3割負担でした。

今回の改正により、2022年後半からは、75歳以上の医療費の自己負担割合が3段階制となります。今まで通り1割負担も維持されますが、一定の所得(単身で年収200万円以上、75歳以上の夫婦なら年収320万円以上)がある高齢者は、医療費の窓口負担が2割負担となります。75歳以上の人の約2割に相当する370万人が、新たにできた2割負担となる見込みです。なお、現役並みの所得がある人は従来通り3割負担となります。

少子高齢化が進む中では、医療や介護制度の維持がますます重要になります。制度を末永く維持するためにも、今回のような制度改正が今後も行われる可能性があることを知っておきましょう。