ドーナツ、野球、宝くじ… お金に糸目をつけない、アメリカ的接種キャンペーン

接種プロモーションでもっとも身近だったのは、みなに愛されているドーナツ店『クリスピー・クリーム・ドーナツ』で、ワクチン接種のカード(アメリカでは、接種すると日付とワクチン名を書いた小さなカードをもらいます)を見せると、ドーナッツ一個無料というもの。しかも何度行ってもいい(ただし一日一個)ので、若い世代の中は、ワクチン接種券で何度も無料ドーナッツをもらっている人もいるようです。

他にも“接種躊躇組”を動かすために、さまざまなリワードが用意されています。ニューヨークでは、ヤンキースかメッツの試合の日にスタジアムでワクチン接種したら、次の試合の入場料無料というキャンペーンもありました。ロングアイランドでは、ワクチン接種でメトロ乗車券7日間無料、シカゴではワクチン完了者は今年の夏の終わりまでミュージックコンサート無料、NFLは2022年2月のスーパーボウルチケットを接種者50人にプレゼントなどなどです。

そんな中、目を見張る極めつけはここカリフォルニア州です。ワクチン接種をすると州のデータベースに接種者として名前が残りますが、その中から宝くじをするというもの。トップ賞はなんと一人150万ドル(約1億6500万円)でこれが10人に当たります。さらに30人に5万ドル(約550万円)、200万人に50ドル(約5500円)のギフトカードが当たります。我が家も4人接種していますので、当たるかもしれない……!

確かにワクチン接種は個人の判断ではありますが、コミュニティとしての接種率は社会的影響力がありますので、ワクチン接種プロモーションは大切な施策だと思います。しかしながら、「社会のことを考えてお互い接種を呼びかけましょう」みたく訴えるのとはまるで違い、「お金あげるから接種しなさい」といういかにもアメリカらしいゲンキンなやり方です。

カリフォルニアでは6月15日に大幅に経済活動・社会生活が解禁になりますので、それを前にラストスパートというところでしょうか。総額コスト1億1650万ドル(116億5000万円)に上るこのキャンペーン、連邦政府のコロナ救済ファンドからカリフォルニア州の災害対策ファンドに供給されるお金を使うそうです。カリフォルニアの経済が元に戻れば、これを大きく上回る経済効果があると判断してのことなのでしょう。

「一人1億6500万円もあげなくてもいいような。1000万円くらいでも十分では?」とも感じます。少なくとも中低所得者なら1000万円の賞金で十分腰を上げる気もするけれど、1億以上の賞金を出さないと腰を動かさない高額所得者をターゲットとしているのでしょうか? ワクチン接種率は高所得者カテゴリーの方が進んでいるというデータもありますが、それより政治的傾向のほうがモノを言い、バイデン派/民衆党主義者のほうが接種率が高いので、もしかしたら接種を拒否しているリッチなトランプ派/共和党主義者あたりを狙っての策なのかもしれません。一方で、本当に生活に困っている人達もいるのだから、災害対策ファンドからお金をそちらに回せるではないかと疑問も感じてしまいます。私にはよく分からない世界です。