長期金利の低空飛行はしばらく続く見通し
「黒田バズーカ」と称された量的・質的金融緩和は、ついに9年目を迎えたわけですが、まだしばらく金融緩和の状態は続きそうです。そもそも日銀が物価ターゲットとしている2%の達成にはほど遠い状況が続いているからです。金融引き締めに転じることなどまず不可能ですし、おそらく引き締めでも緩和でもない中立の金融政策にすることすら、まだまだ先のことでしょう。
今回、発表された金融政策の修正点では、長期金利の変動幅を0.25%程度まで容認することも示されました。従来、0.1%程度とされたのが0.25%まで引き上げられれば、それだけ債券相場の変動幅が大きくなるため、債券のディーリングを行っている金融機関にとっては、いま以上にディーリング収益を上げる余地ができ、収益面にはプラスになる可能性があります。
とはいえ、容認された変動幅は0.25%ですから、長期金利が上昇したとしても、たかが知れています。したがって、長期金利の低空飛行は今後もしばらく続くと見たほうがよいでしょう。
調整局面は一時的で、過剰流動性相場も継続
そして金融緩和が継続されるとすれば、当面は過剰流動性相場が続くと見ることができます。自然体で考えれば、株価には当面、上昇圧力がかかるでしょう。
株式市場にとって、政策修正のひとつであるETFの買い入れ柔軟化は、ポジティブ要因です。これまでは原則として年間6兆円をETFの買い入れメドにしていましたが、このメドを撤廃して、12兆円という上限枠のみが残されました。これにより、従来以上に機動的なETFの買い入れができるようになります。
ただし、ETFについては買い入れの対象をTOPIX型のみにすることが決められました。結果、金融政策決定会合の直後の東京株式市場では日経平均株価への寄与度が高いファーストリテイリングやソフトバンクグループの株式が大きく売り込まれ、日経平均株価は大幅な調整を余儀なくされました。
もっとも、今後も過剰流動性が続くとしたら、この調整局面も一時的なもので終わるでしょう。事実、3月18日から日経平均株価は下落し続けたものの、値下がり銘柄数よりも値上がり銘柄数のほうが多い日もありました。保有している銘柄群によっては、自分のポートフォリオの状況と日経平均株価の値動きの乖離に不思議な気持ちを抱いた投資家もいたはずです。
こうしたねじれ現象が長く続くことはないので、そう遠くないうちに株価は底を打ち、再び全体相場が過剰流動性に押し上げられる展開になると思われます。
最後に、気になる点をひとつ。ある銀行アナリストに聞いた話ですが、日本の銀行が保有している資産のデュレーションは5年程度だそうです。つまり、このままマイナス金利政策が続くと、金利収入が得られる資産はそろそろ底を尽き、銀行のバランスシートが悪化する恐れがあるという話でした。
いま菅政権のもとで地銀再編がまことしやかに語られています。今回の政策点検と政策修正はマイナス金利の長期化を示唆したものであり、その点で考えると、地銀再編の動きがいよいよ加速するのかもしれません。