日本銀行は3月18、19日の両日にわたって開催した金融政策決定会合で、これまでの金融緩和政策に関する点検結果を発表しました。これまで8年近く続いた大規模な金融緩和を点検するとともに、今後も当面、金融緩和を継続するためにいくつか政策に修正を加えています。

今回の点検結果で注目されたのは、日銀が2013年4月から導入した「量的・質的金融緩和」が経済活動や物価に対してどのような影響を及ぼしたのかということです。黒田日銀総裁のもと、8年にわたって続けてきた金融政策を振り返り、総括したものといってもよいでしょう。

日銀の見方としては、「金融環境が大きく改善し、経済活動の押し上げや企業収益の改善につながった」のと同時に「物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった」ものの、「2%の物価安定の目標の実現には至らなかった」というものでした。

新たに創設された「貸出促進付利制度」とは?

こうした点検の内容を踏まえ、日銀が持続的かつ効果的な金融政策運営を続けるために必要な政策修正も行われています。

特に昨今の経済情勢で気になるのは、新型コロナウイルスの感染拡大による、経済活動面へのネガティブな影響です。中でも中小企業が資金繰りの悪化に直面しないようにするため、また、マイナス金利を深掘りした際に金融機関の収益が圧迫されないようにするため、新たに「貸出促進付利制度」が創設されました。

マイナス金利は日銀が金融機関から資金を預かる際に、残高の一部にマイナス0.1%の手数料を課すため、金融機関の収益を圧迫します。加えて預金金利と貸出金利の利ザヤも減少することから、さらなる収益圧迫要因になります。

そこで将来、さらにマイナス金利が深掘りされたとき、金融機関の収益力が今以上に低下することを防ぐために貸出促進付利制度が設けられたのです。具体的には、金融機関が一定のリスクを取って融資を実行した場合、金融機関が日銀に開設している当座預金に上乗せ金利を付利するというもので、マイナス金利が大きくなるほど増えるという性質を持っています。

つまりマイナス金利によって一時的に金融機関の収益力が低下したとしても、貸出促進付利制度によって日銀から金利収入が得られるため、収益力の低下を補うことができます。事実上の補助金といってもよいでしょう。