3.商工業界の“世論”を結集させる、東京商法会議所(現 東京商工会議所)
栄一は「合本主義」(公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方)を提唱し、若手起業家や経営者を支援しました。その中心の場となったのが商工会議所です。
明治政府からの依頼で民間企業の世論の形成や異業種間交流を積極的に行う人材育成の場として、1878年に東京商法会議所(現在の東京商工会議所)を設立、栄一は初代会頭に就任します。
栄一は同会議所の仲間とともに鉄道、セメント、ビールなどさまざまな事業に関わります。当時それらの事業はリスクも高く、まさに攻めの事業。栄一は新規事業に果敢にチャレンジするベンチャー起業家を支援する、今で言うベンチャーキャピタリストでもあったのです。
4.経済発展に欠かせない交通インフラ、日本鉄道(現 JR東日本)
栄一がパリ滞在中に江戸幕府が崩壊し、視察団への仕送りが途絶えてしまいます。一行に動揺が走りましたが、会計係の栄一は慌てませんでした。なぜなら栄一は毎月の仕送りを鉄道株(やフランス国債)にコツコツ投資しており、その利益でもって仕送り分を補うことができたためです。
「何人も問題の起こらぬ時においてその心掛けを練って置き、しかして事に会いし物に触れた時それを順序よく進めることが肝要である」(渋沢栄一)
いざというときの対処は平生の心がけで決まる、と言う栄一は偉大な実業家であるだけでなく、積立投資の達人でもありました。
栄一はパリへの道中で初めて鉄道に乗り、その最先端の技術と利便性に驚嘆します。その後、日本の発展に鉄道事業は欠かせないと、日本初の私鉄「日本鉄道」を皮切りに、北海道から九州まで「私鉄」設立に精力的に関わります。
栄一の鉄道への想いは現在のJR各社や私鉄に受け継がれ、日本の交通インフラを支えています。
まだまだ渋沢栄一の関わった企業は多数! 日経平均株価の見方も変わるかも
生涯を日本の発展のために尽くし、数えきれないほどの功績を挙げた渋沢栄一。
東京ガス、東洋紡、王子ホールディングス……枚挙にいとまがありませんが、日々値動きが報じられる日経平均株価の構成銘柄にも栄一が関わった企業が数多くあります。
それらの企業と栄一がどんな関係だったのか、約一年かけて放送される大河ドラマではどんなエピソードが出てくるのか、興味を持ってみるのも新しい投資の楽しみの一つとなるかもしれません。