「貯蓄から投資へ」の浸透に向けて、日本に残された課題

では、日本では今後も「貯蓄から投資へ」の浸透を期待することはできないのか。筆者はそうは思わない。少なくとも、現時点で判断を下すのは時期尚早であろう。何せ日本ではまだ、長期分散積立投資を実践して財を成したという「第一世代」が誕生していないのだ。米国の場合、IRA(個人退職口座)と1980年代に創設された確定拠出年金制度を活用し、長期分散積立投資を実践していたベビーブーマー世代の成功体験が、ミレニアル世代の資産形成を後押ししている側面も大きい。

日本はどうか。確定拠出年金制度は、制度開始から20年の年月を経てようやく加入手続きの完全電子化の見通しが立ったところである。いささか長いロスタイムであったと言わざるを得ない。

ともあれ、ロールモデルのいない日本の若年資産形成層は現在、SNSやスマートフォンを駆使して情報を収集し、自身に合った資産形成の方法を模索している。事実として、ネット証券、さらには、iDeCoやつみたてNISAの口座数は、足元1~2年で急速に伸びている。一方、自国通貨建ての資産に長期分散投資したところで十分な資産を作れないという点に日本特有の課題も残されている。道のりはまだ長い。しかし、バンガードが日本に残した功績は着実に実を結んでいる。