低コストインデックスによるビジネスの難しさ

徹底した低コスト戦略を貫くバンガード・グループにとって、信託報酬という限りある収入をどう効率的に配分し、投資家に還元するかという点は経営戦略上極めて重要なポイントとなる。これは、他の低コストインデックスファンド・ETF供給会社についても同様だ。特に先述した投資家向けの情報提供などは、少々乱暴な言い方になるが、運用会社にとってみればコストとして跳ね返ってくる。言うまでもなく、その一連のコストは信託報酬によって賄われている。

インデックスファンドのように商品間の差異が大きくなく、低コストの商品を提供する場合、運用会社は相応の預かり資産を積み上げていかなければビジネスを存続できない。これは、総預かり資産6兆ドルを超えるバンガードについても同様である。今回のバンガードの日本支社閉鎖は、同社がグループ全体として投資家に「低コストで良質な商品と最良の投資機会の提供」を継続していくための決定である。「日本は見捨てられたのか」との声も一部では聞かれるが、美辞麗句を並べたところで運用を存続できなければ意味がない。インフラとしての超低コストインデックスファンドを提供するということは、つまりそういうことだ。

なお、日本におけるビジネス展開という点では、低コストETF運用大手の米ウィズダムツリーが、2018年にわずか3年で日本拠点を閉鎖したことも記憶に新しい。同社の場合は、長期運用を促したい同社の戦略が、短期売買志向の強い日本のETF市場とマッチしなかったという点が直接の理由であった。