お金をきっかけに壊れた友人関係
啓子は丸くなった未来の背中にそっと手を添えた。
「とりあえずテーブルに座りなさい。喉渇いたでしょ」
すると、未来はおとなしくテーブルに座った。
「お義母さんも座ってください。3人で話をしましょう」
それから啓子は麦茶を3人分出して、テーブルに座った。
啓子は麦茶を一口飲んでから未来に尋ねた。
「利香ちゃんからお金を出してって言われたとき、どう思った?」
「……払うのが当たり前みたいに言われたのがムカついた。『ありがとう』とか感謝してくれてたのに、そんなの全然なかった……」
「じゃあ、未来はおばあちゃんがお小遣いをくれなかったとき、どう思った?」
啓子の質問に未来は戸惑いの表情を見せた。
「え……?」
「あなたは今日、いつもはくれるのにって言って怒ってたじゃない」
未来はしばらく何も言わなかったが、やがて気まずそうに視線を落とした。
「……そうだね。私、利香ちゃんと同じことをおばあちゃんにしてた」
「あなただって最初は嬉しかったし、感謝もしてたでしょ? でも、いつからかそれが当たり前になってしまった。利香ちゃんもそういうことだと思う」
啓子がそう言うと未来は黙ってうなずいた。
「……おばあちゃん、ごめんなさい」
吉枝はゆっくりと首を横に振った。
「……いいの。私もついあなたが喜ぶかなと思って……」
「お義母さんの気持ちは何も間違ってないです。未来だってそうよ。友達のために何かしてあげたいっていうのは悪いことじゃない。それどころか素敵なことよ。でも、それが必ずしも相手のためになるとは限らないことも分かってほしい。じゃないと、今後も同じようなつらい経験をしちゃうからね」
啓子の言葉に、2人とも素直にうなずいた。
2人の反応を見て、啓子は胸をなで下ろした。うまく伝わるか不安だったが、今回の出来事をきっかけに、それぞれが自分の行動を振り返ることができたようだった。
張り詰めていた空気が少し和らぎ、啓子は2人に麦茶のおかわりを注いだ。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
