円安の舞台は「クロス円」へ
ここから円相場を見ておきましょう。今週の主要通貨の対ドル変化率を見るとドル安だった一方、円はそのドルに対しても下落しています。ただ、日銀の新たな審議委員の候補者2名に関して、確かに過去にはリフレ志向や円安容認と受け取られる発言がみられています。ただ、ここ最近の長期金利の急上昇などを踏まえ、考え方や主張が変わっている可能性もあり、今後の発言が待たれます(スライド9)。
では来週のポイントです。来週はISMの景況指数のほかADP雇用報告やチャレンジャー人員削減数、小売売上高、雇用統計と重要な経済指標を控えています。中でも雇用統計が重要でしょう。
先ほどのウォラー理事の発言にも見られた通り、1月に続いて予想を上回った場合、利下げの織り込みが後退し、ドルをややサポートすると考えられます。その点、労働市場については先週の動画でも紹介した通り、カンザスシティー地区連銀が算出している労働市場情勢指数によれば、労働市場の悪化に歯止めがかかりつつある状況です。
一方、日本では本日(27日)発表された東京都区部の消費者物価指数が予想をやや上回っており、インフレの根強さを示唆しています。財政拡張と金融緩和からインフレ率の高止まりが見込まれる中、日銀の利上げの後ずれは実質金利のマイナスの長期化を通じた円安期待へとつながります。今週の地合いを受け、ドル円はじり高に推移するとみられ、次のターゲットとして衆議院選挙の翌日につけた高値157円76銭円が意識されそうです。
ただ、ドル円については円安牽制や介入警戒感の台頭が見込まれ、次第に上値も重くなりそうです。このため円売りが続くとすればその主な舞台はクロス円になると予想しています(スライド10)。
そこで、年初来のドル円、クロス円の指数化チャートをみてみましょう。足元ではドル円のほかユーロ円、ポンド円などが年初と概ね同水準で推移している一方、利上げに転じたオーストラリアでは資源価格の上昇も追い風となって、豪ドルが上昇しています。豪ドル円は年初来約6%も上昇しており、個人投資家が多く参加しているとされるメキシコペソ円も年初来4%も上昇するなど、クロス円の上昇が目立っている状況です。
緊急アップデート:イラン情勢と「リスク回避」の変質
本動画を収録した後、米国とイスラエルがイランに対して攻撃を開始したことが報じられました。緊張の高まりは基本的に「有事のドル買い」を招くと考えられます。
一方、投機筋の円の持ち高は中立に近く、「リスク回避の円買い」は起こりにくい状況です。従って、緊張の高まりは総じてドル高円安に作用する可能性が高いでしょう。
もっとも、3月1日にはイランの最高指導者が死亡したと報じられています。この場合、「有事のドル買い」が和らぎ、先週の材料を引きずった円は弱いまま、即ちドルも円も弱い場合、クロス円が上がりやすくなります。今後、戦闘が早期終結となるのか、長期化の様相を呈してくるのか、関連する報道に注目です(3月1日、13時現在)。
――――――――――――――――――――――――――――――――

