新薬に期待、ピーク売上1兆6500億円 25年度にも申請へ
まずは概要です。武田薬品工業は国内トップの医薬品メーカーです。19年にアイルランドのシャイアーを買収し、業績が大きく拡大しました。国内勢では、世界的メガファーマに最も近い存在となっています。
【主な医薬品企業の医薬品売り上げ(2024年度)】
<日本>
・武田薬品工業:4兆5816億円
・アステラス製薬:1兆9123億円
・大塚ホールディングス:1兆6290億円
<世界>
・米ファイザー:9兆5441億円(636.27億米ドル)
・米メルク:8兆6100億円(574.00億米ドル)
・米ジョンソンエンドジョンソン:8兆5446億円(569.64億米ドル)
※1米ドル=150円換算
出所:各社の決算資料
主力は「エンタイビオ」です。2014年にグローバル販売を開始した消化器系疾患の治療薬で、現在は世界70カ国で承認を受けています。25年3月期はエンタイビオだけで9000億円を超える売り上げを獲得しています。
【主要製品の売上収益(25年3月期)】
・エンタイビオ(ベドリズマブ):9141億円
・免疫グロブリン製剤3製品(※):7578億円
・タクザイロ(ラナデルマブ):2232億円
※ガンマガード・リキッド(キオヴィグ)、ハイキュービア、キュービトル
出所:武田薬品工業 有価証券報告書
ただし、エンタイビオは最短で26年5月に米国の保護期間(独占的な販売期間)が終了します。また、米国においてはほかの主要製品も多くが30年前後に終了する見込みで、「パテントクリフ(特許の崖)」による売り上げの減少が懸念されています。例えば、23年に保護期間を終えた「ビバンセ」は、25年3月期までの2年間で売り上げが1000億円以上減少しました(25年3月期:3506億円)。
売り上げの補填として期待されるのが新薬です。注目は「ラスフェルタイド」と「オベポレクストン」、「ザソシチニブ」の3つで、合計の売り上げはピーク時で最大1兆6500億円を想定します。いずれも開発の最終段階あたる第3相試験に入っており、承認申請は25年度~26年度中の実施を見込みます。
【主な後期開発パイプライン】
※1米ドル=150円換算
新薬の開発は外部との提携も活用します。武田薬品工業は25年10月、中国のイノベント社との提携を公表しました。同社が開発する3つのがんパイプラインにおいて、中国・香港・マカオ・台湾以外の権利を取得する内容です。うち2つは開発の後期フェーズに入っており、がん治療の有効な手段となることが期待されています。
