パイロットファンドでの実績は…

なぜ、このような話を長々としたのかというと、「野村日本バリュー厳選投資」が、まさにパイロットファンドを投資対象にしているからです。

「野村日本バリュー厳選投資」は、ファミリーファンド方式を採用しています。ファミリーファンド方式を採らない投資信託は、ファンドに集められたた資金で、株式や債券といった投資対象を直接買い付けていきますが、ファミリーファンド方式のファンドは、ベビーファンドに集められた資金で、株式や債券などを組み入れて運用しているマザーファンドを買い付けます。「野村日本バリュー厳選投資」を例に説明すると、「野村日本バリュー厳選投資」がベビーファンドに該当し、マザーファンドは「ジャパン・ストラテジック・バリュー集中型マザーファンド」になります。

「それってファンド・オブ・ファンズ?」という疑問もあるかと思います。確かに、ファンドでファンドを買うというコンセプトは、ファンド・オブ・ファンズに似ているのですが、ファンド・オブ・ファンズが複数のファンドを組み合わせて運用するのに対し、ファミリーファンドは単一のマザーファンドで運用します。つまり「野村日本バリュー厳選投資」と「ジャパン・ストラテジック・バリュー集中型マザーファンド」は、リスク・リターンの面において、ほぼ同一ファンドでああると考えられます。

では、「ジャパン・ストラテジック・バリュー集中型マザーファンド」がパイロットファンドだった頃のリターンは、どの程度なのでしょうか。

「野村日本バリュー厳選投資」の請求目論見書で「ファンドの現況」を見ると、参考として「ジャパン・ストラテジック・バリュー集中型マザーファンド」の、2025年7月31日現在の資産総額などが記載されています。ここからどの程度のリターンが実現されているのかを類推できます。

まずは数字を列挙してみましょう。

・資産総額・・・・・・601,751,292円
・負債総額・・・・・・―円
・純資産総額・・・・・・601,751,292円
・発行済口数・・・・・・496,541,642口
・1口当たり純資産額・・・・・・1.2119円

注目したいのは「1口当たり純資産額」です。これが基準価額とイコールだからです。一般的に基準価額は1万口あたりで表示されるので、この数字で計算すると、基準価額は1万2119円になります。

ベンチマークはないもののTOPIXと比べてみると…

運用開始時の基準価額は1万円ですから、7月末時点でこのパイロットファンドには2119円の評価益が計上されていることになります。では、この評価益をどの程度の運用期間で実現したのでしょうか。

残念ながら請求目論見書には、パイロットファンドの運用開始日までは記載されていませんでした。そこで、運用者である野村アセットマネジメントのフリーダイヤルで確認したところ、2024年11月であることが判明しました。

同ファンドはベンチマークを設定していませんが、参考までに、2024年11月末の配当込み税引後TOPIXと、騰落率を比較してみましょう。ちなみに同TOPIXの2024年11月末時点は4276.56ポイントで、2025年7月末は4754.25ポイントでした。この間の騰落率を計算すると、

ジャパン・ストラテジック・バリュー集中型マザーファンド・・・・・・21.19%
配当込み税引後TOPIX・・・・・・11.17%

となりました。わずか8カ月間の騰落率なので、できればもう少し期間が欲しいところですが、配当込み税引後TOPIXを大きく上回るリターンを実現しています。

次に、少数銘柄への厳選投資というコンセプトが似ている他ファンドの騰落率とも比較してみましょう。計測期間は同じです。

コモンズ30ファンド・・・・・・6.37%
おおぶねJAPAN・・・・・・5.15%
なかの日本成長ファンド・・・・・・4.97%

わずか8カ月間という短期間のパフォーマンス比較なので、これだけで良し悪しを判断するのは、いささか危険かも知れませんが、「ジャパン・ストラテジック・バリュー集中型マザーファンド」がパイロットファンドとして運用されていた期間中の運用実績は、かなり優秀であると考えられます。

そして、運用実績の良さもさることながら、きちっとパイロットファンドを立て、一定期間の運用実績を生み出したうえで個人向けにリリースするところが、「野村日本バリュー厳選投資」の“偉いところ”だと思います。

日本株は強気相場が続くが、それをも上回るポテンシャルを秘めているのが「アクティブ投資」

「野村日本バリュー厳選投資」のシニア・ポートフォリオマネージャーである和田共弘氏は、同ファンドの販売用資料で、運用において大切にしていることとして、「強い企業を安く買うこと」を挙げています。

日経平均株価が5万円に乗せ、強気の全体相場が続くなか、アクティブファンドのなかにはマーケットの上昇についていけないものもありますが、このようにマーケットの上昇を大きく上回る値上がりを実現できるのも、アクティブファンドならではの特徴とも言えるのです。