DNCAインベストメンツ
ポートフォリオ・マネージャー
チーボー・ シャパティ氏
 

――グローバルな投資環境をどのようにご覧になっていますか。
経済成長、インフレ、金融市場という3つの観点からお話しします。

まずグローバルな経済成長は、米国や中国の失速を主要因として若干減速しています。ただ全体として見れば非常にわずかな減速に過ぎないと見ており、実際に足元では米国の第2四半期のGDP成長率が改定値で3.3%から3.8%に引き上げられています。

インフレについては国・地域によって状況が異なります。欧州ではインフレが落ち着き中央銀行の目標とする水準に沿っていますが、一方の米国では中央銀行の目標である2%に対し、指標によっては2.7~2.8%と、やや高い状況です。

最後に挙げた金融市場の状況に関しては、株式市場、債券市場など全体的に非常に良いと言えます。日本を除くほとんどの国で中央銀行が利下げをしており、クレジットスプレッドも非常にタイトで、企業にとっては資金調達がしやすい環境です。

――軟着陸を予想する声も聞かれますが、米国経済の見通しはいかがですか。
減速すると考えています。その主なドライバーは関税ではなく、トランプ氏の移民政策です。

もし移民の受け入れをストップした場合、経済成長に大きな影響が出るでしょう。これまで米国では、毎年約150万人の移民が労働力に加わっていました。これは1億6000万人の労働人口に対して年率約1%の増加に相当し、賃金の上昇を抑制することで企業の利益率を高める要因となっていました。

また、移民には消費者の側面もあります。移民が排除されればその分だけ消費も失われることになるのです。

とはいえ、景気後退に至ると予測しているわけではありません。現在の米国経済は非常に良い状況であり、減速することはあってもマイナスに転じることはないでしょう。関税の影響や消費の減少を織り込んでも、失業率が大きく上がるとは考えづらいですし、失業率が低い水準にとどまる限りはリセッションに入ることはないと見ています。

――関税が経済に与える影響の程度をどうお考えですか。
基本的にはインパクトはそれほど大きくないと考えています。大きなインパクトをもたらす懸念としては関税に伴うインフレ率の上昇が挙げられますが、インフレ率が5%以下であれば、経済がリセッションに入ることはないでしょう。

この5%という数字は、過去1年間の米国の賃金上昇率が4~5%だったことに基づいています。仮に関税の影響でインフレ率がこの水準まで引きあがったとしても、賃金も同程度上がっていれば人々の消費は減らず、影響は中立的になります。加えて、失業率もそれほど悪化していません。

――インフレ率が5%を上回らないと考える理由はなんでしょうか。
いくつか要因があります。一つは、トランプ氏が関税政策を発表した際、相手国からの報復関税を恐れる指摘が多く聞かれましたが、実際には大きな影響はありませんでした。報復関税の掛け合いになったとしても、最終的には経済規模の大きい米国が勝つからです。

二つ目の要素として、米国は非常に大きな国内市場を持っていることが挙げられます。GDPに占める輸入の割合は20%以下で、欧州や日本と比べてかなり限定的です。そのため、輸入物価の上昇が経済全体に与える影響は比較的小さいのです。