最高のアナリストはあなた自身

そもそも花王は儲かっているのか、最近出した新商品にはどんな目的があるのか、花王という会社の成り立ちはどうなっているのか──そんなことを考えながらスーパーに行くだけでも、分析のヒントはごろごろ転がっています。

ついでに花王だけでなく、その商品の隣に並んでいるメーカーと比較してみると、3C分析における「競合」にまで踏み込むことができます。すなわち、スーパーに行くだけで3C分析はほとんど完了してしまうのです。

たったそれだけでよい分析ができるものかと訝る人も少なくないでしょう。確かに、証券会社のアナリストのように一つひとつの細かな数字を押さえられるわけではありません。一方で、毎日花王の商品を買いに行くアナリストは決して多くありません。

財務諸表に並んでいる数字は、あくまで過去のものです。財務分析ばかり行っているアナリストは、いつまでたっても後ろばかりを見ているに過ぎません。

それに対してあなたが今日その商品を買ったということは、どのレポートよりも最新の情報であることは間違いありません。しかも、純粋な顧客として購入していれば、単なる仮説ではないリアリティがそこにあるのです。その感覚は、どのアナリストをも上回ることができます。

実際に、消費者がアナリストに先立ってすばらしい企業を見つけられる事例というのはごろごろ転がっています。例えば、「業務スーパー」という格安スーパーマーケットチェーンがあります。元々海外からの輸入品を大量に売ることを得意としていましたが、牛乳パックに入った羊羹などのオリジナル商品も積極的に出すようになり、消費者の間で話題になりました。

その後次々に店舗展開を図り、やがてテレビなどでも頻繁に取り上げられるようになりました。

あなたは「なんだかお得そうだな。ちょっと行ってみよう」と興味本位で行って、思いのほかハマってしまうかもしれません。ここで少しだけ頭を企業分析モードにしてみると、安い商品を買えたという以上の大きなリターンを得られるかもしれないのです。