日経平均が最高値の更新を続け、日本の株式市場は大きな盛り上がりを見せています。

ただ、もちろんすべての企業が好調なわけではなく、株価を落としている企業も当然存在します。

どうすれば、良い銘柄を選ぶことができるのでしょうか。プロも行う基本的な企業分析の方法を、投資顧問会社の代表で人気YouTuberの栫井駿介氏が解説します。(全4回の3回)

※本稿は、栫井駿介著『1社15分で本質をつかむ プロの企業分析』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋・再編集したものです。

タテから見る、ヨコから見る

私は大学受験で世界史を選択していたのですが、その時に大いに参考にさせてもらった参考書に『タテから見る世界史』『ヨコから見る世界史』があります。

世界史は、様々な国・地域のことを扱っています。基本的にはそれぞれの国や地域で起きたことを時系列に追っていくことになるのですが、一方でそれぞれが独立しているわけではないので、ある地域の歴史に突然別の地域の歴史が入り込んできたりします。

世界史を専攻していない方にも分かりやすく説明するとしたら、鎌倉時代に中国の元が日本に攻め込んできた「元寇」です。元はもともとモンゴルから生まれた国家であり、強力な騎馬隊を武器に中国を統一、やがてアジア中を征服していきます。日本は鎌倉時代で、北条時宗が執権だった時に元が攻めてきたのですが、運よく「神風」が吹き、辛くも追い返すことに成功しました。元は騎馬隊が強みでしたから、もし日本が大陸と陸続きだったらあっという間に征服されていたかも……。

センター試験ならそれぞれの国で起きたことを時系列で並べられれば問題なかったのですが、東大の世界史はひとつの地域だけでなく、世界横断的にどのような理由で何が起きたのかを問うてきます。元寇の例で言うならば「どのような経緯で元は日本に攻め込んできたのか? その起源から元寇までを△△という語句を使って論述せよ」という具合です。すなわち、世界史の中で「ヨコ」の繋がりが分かっていなければ、よい論述をすることができず、点が取れない仕組みになっています。

教科書ではそこまでサポートしてくれません。あくまで、それぞれの地域のことが別々に書かれているだけです。論述に回答するためには個別の出来事を時系列で覚えているだけではダメで、外部のどのような力が働いて事象が起きたのかを理解していなければなりません。当然、外部は外部で時系列的に進んでいますから、そちらの動向も理解していなければなりません。

とても難度が高く苦労した思い出があるのですが、考えてみれば現実の世界はまさにここで言う「タテ」と「ヨコ」の双方から何が飛んできてもおかしくない世界です。企業にしても「今タテ(内部)の問題をやってるから、ヨコ(外部)の影響は一旦無視して」というわけにはいかないのです。