強制ダイエットのスタート
夕食の時間、ダイニングテーブルにやってきた吉弘は出されている料理を見て顔をしかめる。
「え? これだけ?」
テーブルの上にあるのは鮭の塩焼き、冷や奴と味噌汁、それと小盛りの白ご飯だ。
「そうよ。ヘルシーな食事に今日からするから」
「は? 何でだよ? ダイエットはしないって俺は言っただろ?」
美和子は厳しい顔で説明をする。
「そんなのはダメよ。これ以上太ると健康的に危ないから。もし何か生活習慣病とかになったら治療費だってかかっちゃうしね」
「いやそんな勝手に……」
美和子は渋る吉弘にとある書類を見せつけた。
「これは分かる? あなたが年明けに受けた健康診断の結果よ。中性脂肪は基準値を超えてるし、血圧だって高い。これで半年以上前なのよ。このときよりも完全に太ってるんだからもっと悪くなってる可能性もある。ここでダイエットしないとずるずる悪化していくだけでしょ」
美和子の正論に言葉が詰まった吉弘は言い返すことができなかった。
「もちろんずっと続けるなんてことはしないわ」
「え?」
美和子は吉弘の体を見る。
「そうね。あと8キロくらい痩せられたらダイエットは終わりにする。食事も今まで通りにやっていいから」
「は、8キロ……?」
「別に簡単でしょ? ダイエットなんて誰でもできるって言ったのはそっちなんだから」
美和子の言葉に吉弘は悔しそうな顔をするも、プライドを守るために渋々であるが受け入れる他なかった。
