太っている吉弘もダイエットに…

「ねえ、あなたこそちょっと痩せた方がいいんじゃないの?」

「ええ? 何を言い出すんだよ」

「かなり太ってるでしょ? 今着てるスーツだってかなりキツそうじゃない」

「そんなことないって。まだ大丈夫だから」

「でもこのままいったらまたスーツを買い替えないといけなくなるよ? それでもいいの?」

吉弘は面倒くさそうに欠伸をした。

「そんなことにならないから大丈夫だって」

「ちょっとウォーキングとかするだけでも全然違うと思うけど。運動不足だと体にもよくないでしょ?」

「そんなのいいって。俺には必要ない。別にちょっと痩せるくらいわけないし、必要になったらやればいいよ。その程度、誰でもできることなんだし」

美和子は吉弘の言い草に思わず目を見開いた。何か言い返そうと思ったが、怒りが言葉よりも先に怒りが込み上げ、何も言わずにリビングを出た。

吉弘は昔から出不精なところがある。休みの日も基本的に家で過ごすことを好む。そこに関して美和子は何の不満も抱いたことはない。

美和子も家でゆっくりするのは好きだからそれはいい。運動をあまりしないのだって好き好きだからいいと思う。しかし頑張ったダイエットをバカにされるのは絶対に違う。

美和子は脱いだカットソーを鏡に向かって投げつけた。

「できるのならやってもらおうじゃない……」

美和子は強制的に吉弘にダイエットをさせてやろうと決意した。