ドルに不安材料はないか

こうして見ますと、大幅な利下げによってドルが続落して行くシナリオは描きにくい反面、当面のドルについて不安材料も少なくありません。例えば、来週の雇用統計が顕著に予想を下回った場合、年内2回の利下げの可能性が高まります。ところが、現在市場は年内利下げをそこまで織り込んでおらず、雇用統計後にドル安が進む可能性があります。

また、関税の合憲性をめぐり、最高裁の司法判断待ちです。仮に違憲判決が出た場合、アメリカの財政不安が再燃し、ドル安圧力が高まりそうです。判決は早くて年内に出されそうです。ただし、この点についてトランプ政権は、さまざまな根拠法を持ち出して関税を死守するとも見込まれます。

その他では、政府機関閉鎖の可能性が浮上している点です。新鮮味に乏しい材料ですが、格下げなどに波及するならやや大事にもなりかねず、一定の注意が必要です。以上を踏まえるとドル円を含め、ドルに対し、まだ強気になることに慎重さも求められます。(スライド 9)

 

ではドル指数の水準感を確認しておきましょう。2021年以降の安値と高値の内、年初来のドル安により、61.8%押しをさらに下抜けしました。その後、下げ渋り、持ち直しに転じていますが、まだ戻りが鈍い状況です。(スライド 10)

 

※ドル指数は複数の主要通貨に対するドルの総合的な値動きを示す名目実効為替レートの一つです。算出対象通貨はEUR(57.6)、JPY(11.9)、GBP(11.9)、CAD(9.1)、SEK(6.4)、CHF(3.6)の6通貨です(カッコの数字は算出時のウェイト)。