ついに米国へ本格進出、現地4位を大型買収 先行の英BATは苦戦
続いて米国への進出を解説します。日本たばこ産業は24年8月、たばこで米国4位のベクターの買収を公表しました。買収は10月に完了し、完全子会社としています。
日本たばこ産業は積極的なM&Aで知られますが、米国向けは限定的でした。99年と16年には、それぞれ米RJRナビスコと米ナチュラル・アメリカン・スピリットから事業の一部を譲り受けますが、対象はいずれも米国外のたばこ事業でした。15年に電子たばこの米ロジックを買収したものの、米国内では大型の買収がない状態が続いていました。
【日本たばこ産業の主な大型買収】
・米RJRナビスコ米国外たばこ事業:9440億円(1999年)
・英ギャラハー:1兆7200億円(2007年)
・米ナチュラル・アメリカン・スピリットの米国外たばこ事業:5914億円(2016年)
・米ベクター:3446億円(2024年)
※金額は当時の為替レート
出所:日本たばこ産業 有価証券報告書
そうした状況下から日本たばこ産業は満を持して米国へ本格進出します。米国市場は世界最大の中国に次ぐ規模で、その中国は現地の国営企業が独占しています。米国は、外資の進出余地がある地域では最大の市場といえます。
そして、日本たばこ産業は販売数量で世界3位(中国除く)ながら、地域は欧州およびアジアが中心です。手薄な米国を補完することで地域ポートフォリオを拡充し、売り上げの底上げを目指します。
とはいえ、米国は簡単な市場ではありません。「マールボロ」や「ニューポート」、「ラッキーストライク」など、競合ブランドは強力です。また、規制の強化や製品の多様化などから、市場は複雑化しています。英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も、17年の米レイノルズ・アメリカン買収で米国に再進出しましたが、23年に現地事業で巨額な減損を実施し、全体でも営業損失に転落しました。
日本たばこ産業の米国事業は成功するのでしょうか。今後の展開が注目されます。