カナダ訴訟が和解、総額3.6兆円を支払いへ なぜ株価は上がった?

まずはカナダ訴訟です。日本たばこ産業は、カナダでたばこ被害に関連する集団訴訟を抱えていました。グループのカナダ子会社と、別の現地たばこ会社2社の計3社が訴えられたものです。

この和解案が25年3月に合意に至りました。被告たばこ会社3社が和解金として総額325億カナダドル(3兆5600億円)を支払うことで決着します。関連する損失の計上から、日本たばこ産業は直近の24年12月期に前期比51.9%減の大幅な営業減益となりました。

しかし、冒頭のとおり日本たばこ産業の株価はおおむね順調です。なぜ投資家は同社株式へ資金を向け続けているのでしょうか。

実は、当該訴訟は1998年から続く長期の案件で、有価証券報告書にも記載され続けてきました。相場には相当織り込まれていたと考えられます。むしろ、今回の動きで不透明感が払拭されたことはプラス要因といえるでしょう。

また、支払い計画が比較的緩やかだったことも幸いでした。和解案は、頭金として一定額を支払ったあと、3社の総額に至るまで分割でカナダ子会社の純利益70~85%を支払う内容です。見込まれる弁済期間は20~30年と長く、時間的なゆとりから資金繰りの懸念が後退します。

さらに、実力ベースでは増益が続いていることも追い風です。先述のとおり、一般的な会計原則上の営業利益は大きく減少したものの、一時的な費用を除いた調整後営業利益(※)は増加傾向で、特殊要因を除けば順調といえます。

※調整後営業利益…営業利益から買収で生じた無形資産にかかる償却費および調整項目(のれんの減損損失、リストラクチャリング収益および費用など)を控除したもの

日本たばこ産業の業績(2015年12月期~2024年12月期)
 
出所:日本たばこ産業 決算短信より著者作成
 

これらの要因から、日本たばこ産業は訴訟における和解金の支払いは多額であるものの、解決への方向性が定まったことで株価は堅調に推移していると考えられます。