信託報酬は顧客のフォローへの対価

多くの銀行がコンサルティング営業に力を入れる中で、手数料に対する考え方も変わってきています。従来は販売手数料が重視され、しかもそれは文字通り、販売の対価でしかありませんでした。しかし現在は、ファイナンシャルプランニングなどのコンサルティングの対価であり、それこそが対面というリアルチャネルの付加価値だと考えられるようになっているのです。

また、投資信託には信託報酬という、運用している期間中に日々かかる費用がありますが、その一部は販売会社の収入になります。投資信託は販売して終わりではなく、長く保有し続ける商品ですから、銀行では運用状況の報告やライフプランに変更がないかの確認といったフォローにも注力しています。信託報酬は、その対価といった位置づけになってきているのです。

特に資産運用は「続けること」が最も大切だといわれていて、例えばマーケットが一時的に暴落したような時に解約してしまうと、「高値で買って安値で売る」という最悪の選択になりかねません。だからこそ、そうした際に現状を説明しながら顧客に寄り添い、支えるという役目も、銀行の担当者にはあるのです。

もっとも、こうした対価と付加価値の関係は、現状では必ずしもきちんと整理されているわけではありませんし、法的な整備が必要な部分もあるようです。それでも、銀行の提案手法が以前と比べて、格段に進化しているのは間違いありません。

銀行ビジネス

 

著者名 菊地敏明
発行元 クロスメディア・パブリッシング
価格 1848円(税込)