前回のコラムでは、資産形成のための税制優遇制度である、DC(企業型DC/iDeCo)とNISAそれぞれの利用状況と、この1年での利用状況の変化をみてきました。

今回は、両制度の“両立状況”にフォーカスをあてて、皆さんの資産形成の状況をより詳細に分析してみたいと思います。

●参考記事:NISA・iDeCoの利用者は1年でどれだけ増えた? 年間の資産形成額の平均も明らかに【1万人調査】

1.DC利用者は約6割がNISAも利用

まず、DCを利用している人・利用していない人のNISA利用率を確認します。

特にDCは、会社が運営する企業型DCと、個人で加入するiDeCoがあり、加入の動機や利用の自由度なども異なることから、「企業型DC・iDeCoのいずれか加入」「企業型DCに加入」「iDeCoに加入」の3ケースで比較します。

すると、DCを利用していない人のNISA利用割合が15.9%にとどまるのに対し、「企業型DCまたはiDeCo」利用者は60.1%がNISAも利用していました。

また、会社の制度である「企業型DC」の利用者では、約5割がNISAを利用、自ら能動的に申し込む「iDeCo」利用者では約7割と更に高いことが分かりました。

【図表1】DC/iDeCoの加入状況別、NISA利用状況

 
(出所)特に出所を示していない場合、三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)よりミライ研作成
 

2.NISA利用者のiDeCo関心も若年層を中心に高い

続いて、NISAを利用している人のDC利用率や利用意向を確認します。

なお、企業型DCは会社が用意している制度であるため、自ら申し込むiDeCoに関する利用率・利用意向を分析しています。

NISAを現在利用している人におけるiDeCoの利用割合は、50代までは年齢が上がるにしたがって増える傾向にあります。

iDeCoは所得控除などの税制優遇があるものの、60歳まで途中引き出しができない制度であり、資産を引き出す自由度が低いことが若年層の利用率に影響しているかもしれません。

一方で、「(現在利用していないが、)利用意向がある層」も含めると、一転して若年層の方が高い傾向になっていました。18~29歳でNISAを利用している若年層において、「iDeCoを利用している/利用意向がある」人の割合は51.9%に上ります。

iDeCoの注目の高まりは、法改正なども契機になっていると推察できます。

2024年11月までは、会社員や公務員の方がiDeCoを始める際に、企業・団体に「事業主証明書」という書類を準備してもらう必要がありましたが、2024年12月からは本証明書の提出が原則不要になったため、iDeCoの申し込みが手軽になりました。

また、同時期の法改正により、iDeCoに拠出できる掛金額の上限が見直されるなど、税制優遇の効果を享受できる規模も大きくなったといえます。

国民年金基金連合会より発表された情報によると、2024年12月には、前年同月比 200%を超える 72,000人がiDeCoに加入、加入者総数は2025年5月時点で366万7,361人となっており、iDeCoの注目度もますます高まっているといえます。

【図表2】NISA利用者のiDeCo利用意向