――資産運用フォーラムの立ち上げに至るまでの経緯と設立の背景、課題意識、そしてフォーラムとして目指しているビジョンについてお聞かせください。

現在、日本は世界の投資家から大きな注目を集めています。インフレ率は過去10年で最も高くなり、賃金は32年ぶりに上昇。政策金利もこの18カ月で3度引き上げられ、現在、長期金利は過去約15年で最も高い水準にあります。加えて、株式市場も過去最高値を更新し、海外からの投資資金も活発に流入するなど、日本経済には明確な“リバイタライゼーション(再活性化)”の兆しが見られます。

 

こうしたマクロ経済の追い風を受け、日本政府も「貯蓄から投資へ」のシフトを本格的に推進しています。2023年には岸田首相(当時)がニューヨークでのスピーチで、日本を国際的な投資拠点として強化する方針を打ち出し、市場の流動性や参加層の拡大を訴えました。幅広い国民の皆さまの豊かさの実現という視点も、今後の政策の大きな柱となっています。

一方、グローバルな視点では、日本が低金利環境にあるなか、投資家の関心は従来の株式や債券といったパブリック市場だけでなく、比較的高い利回りを追求できるプライベートエクイティ(PE)、不動産、インフラ、プライベートクレジットといったオルタナティブなプライベート市場にも広がっています。これら非公開市場では、取引の透明性や情報開示 の不足といった課題があり、健全な市場形成に向けた新たな枠組みが求められています。

このような投資環境の変化と日本政府の取り組みを背景に、国内外の資産運用会社を中心とした関係者の皆さまの対 話の場として官民連携により立ち上がったのが「資産運用フォーラム」です。

ブルームバーグは国内外7社、そして金融庁とともに準備委員会メンバーとして立ち上げから参画し、現在は事務局の運営を担っています。

われわれは創業以来40年以上にわたり、金融とテクノロジーの融合により、世界中の市場の透明性向上に取り組んできました。金融のデジタル化やデータ活用の分野での知見を生かし、資産運用フォーラムを通じてグローバルでのベストプラクティスや先進的な知見(ソートリーダーシップ)を日本に届け、国内外の関係者との建設的な対話を促進していきたいと考えています。

 

――資産運用フォーラムの現在の参加会員数、また海外の大手PEファンドなどオルタナティブマネジャーの参画状況についてもお聞かせください。

現在、50社を超える企業が参加しています。この水準は、フォーラム立ち上げ2年目としては非常に前向きな成果であると受け止めています。開かれた、誰もが参加しやすい“インクルーシブな場”として、資産運用フォーラムが受け入れられている証だとすればとても嬉しく思います。

 

海外の大手PEファンドやその他のオルタナティブ資産マネジャーの皆さまの参加も進んでおり、グローバルな視点から議論できる環境が整ってきました。私たちとしては、業界にとって最も重要なテーマ、たとえば制度設計や市場の課題などについて、参加企業各社とオープンに議論し、最適なソリューションを共に見出していく場として機能するようサポートしていきたいと考えています。

 

――参加する金融機関の募集はどのように行っているのでしょうか?

事務局としては、新規の参加企業の拡大も大事ですが、同時に資産運用フォーラムの目的や意義をしっかりと社会の皆さまにご理解いただくことも、とても大切だと考えています。そのため、金融庁とも連携しながら、フォーラムの価値をどのように高め、広く伝えていくかという点に注力している段階です。