なぜMMFや米国債から始めるのか

こうした資産が最初に選ばれているのには理由があります。

まず、価格変動が比較的少ないため、トークンの取引価格と裏付け資産の市場価格が大きく乖離(かいり)しにくい点が挙げられるでしょう。加えて、MMFや米国債はもともと売買ニーズが日常的に存在し、流動性の高い資産です。オンチェーンでの資金管理にも実需があり、既存の法規制のもとでも導入しやすいというメリットもあります。こうした特徴は、発展途上の段階にあるトークン化に適しており、現実的かつ段階的な取り組みが進められている理由の一つと考えられます。

日本の不動産トークン化との違い

日本では不動産を裏付けとしたデジタル証券が先行しています。小口化や分配管理の効率化といった点では、たしかに投資家にとっての利便性は高まっているのでしょうが、不動産という資産には特有の課題もあります。

それは売買の頻度が低く、価格の透明性が限定的で、売却までに時間がかかるといった不動産ならではの性質に起因します。たとえトークン化されて小口化されていても、裏付けとなる不動産が小口単位で実際に売買できるわけではありませんし、価格形成が必ずしも明確とはいえません。そのため、原資産と切り離されたデジタル証券だけが売買されると、裏付け資産である不動産の実際の価格から大きく乖離した値段で取引されてしまう可能性があるのです。