定期収入としての公的年金で安心を得て、計画的な資産取り崩しを

実のところ、こうした老後の不安にもっとも簡単に答えてくれる方法は「定期収入」です。銀行預金通帳の残高が数万円しかなかったとしても、生きている限り定期的に振り込んでくれるお金があれば、困ることはないからです。

公的な年金制度はまさにこれを役割としている制度です。90歳でも100歳でもあるいはそれ以上の年齢まで長生きしたとしても、定期的に年金の振り込みをしてくれます。ある程度は物価上昇に連動しますので、目減りしていく恐れも低くなっています。

よく「払った分、もらえるのか?」と言われますが、平均より長生きすれば誰でも払った以上の年金をもらうことができます。「あなたの保険料分の年金は支払ったので、90歳の誕生月で年金振り込みは終了します」ということはないからです。

老後の期間が何年であってもずっともらえる「安心」を意識したほうがウェルビーイング的にはよいと思います。まだ若いうちから「早く死んだら損じゃないか」と考えるのはもったいないことです。

そのうえで、手元にある銀行預金や投資資金残高を計画的に取り崩していくことを考えます。こちらも「計画的」に行うことで安心感が得られます。

例えば退職金、iDeCo、NISAを合計したらちょうど2000万円だったという人がいたとします。仮に1000万円は葬式代や老人ホーム入居費として残しておくのなら、1000万円は使っていいことになります。

65歳から80歳まで、15年くらいはアクティブに老後を楽しむと考え、1000万円を15年で割れば、年66.6万円、月額にして5.5万円の取り崩し予算が設定できます。

たかが5万円のおこづかい、と考えては楽しくありません。「年に一度くらい10~15万円で旅行をする」「子や孫へお年玉等で10万円は確保」「月に一度、美術展か映画に行ってご飯して帰る(予算1万円)」のように具体的に幸せを手に入れることを考えていけば、幸せをたくさん手に入れることができるはずです。

2000万円なくてもいいのです。自分なりに幸福を最大化するためのお金の使い方を考えてみてください。

楽しかったと言える最期の瞬間のために

誰しも、いつかは最期の日が訪れます。そのとき後悔を抱えて目をつむるより、心置きなく最期の瞬間を迎えたいものです。

どんなに預金残高がたくさんあっても、最期の幸福度は買えません。その日がやってくるまでに、どのような経験をしてきたか(特に友人関係、家族関係が重要)が、あなたの人生全体のウェルビーイングを左右するのです。