人生で一番大切な仕事は「思い出作り」である

『DIE WITH ZERO』を読んでみるとなかなか刺激的な文言が並んでいます。例えば「若い頃にはした金を貯めるな!」と言われると、お金を貯めちゃいけないのか? とびっくりするかもしれません。

ただし、そこで指摘しているのは資産形成をするな、という意味ではありません。経験や感動、思い出作りにちゃんとお金を使うべきだ、という意味です。

例えば、世界旅行を夢見ている人が、夢を先送りしているうちについに健康を害して結局行けなくなったとしたら、それはもったいないことです。体が元気なうちに夢をかなえておいたほうがいいわけです。

『DIE WITH ZERO』は実はウェルビーイングの観点から、お金を使うことを勧めています。「今しかできないこと」に惜しみなくお金を使えと主張する理由は「人生で一番大切な仕事は『思い出作り』」であるからです。

同書はそうした経験を増やすと、雪だるま式に幸せになれるのだと説きます。ウェルビーイングを考えるときよく、「経験や感動への消費」いわゆる「コト消費」のほうが「モノ消費」よりも私たちを長く幸福にしてくれると言いますが、まさにこれです。

『ゼロ活』も同様に、人生の楽しいことのためにお金を使う方法を、簡単に計算できるリタイアメントプランニングの手法も示しつつ、解説しています。人生をパズルのピースに例えたとき「イヤな思い出の黒いピース」より「楽しい思い出の白いピース」をたくさん埋めていったほうがいい、と説く説明には頷かされます。