不動産は「一物四価」とも「一物五価」とも言われる理由
ところで前述したように、ひとことで「地価」といっても、日本には路線価以外に公示地価や基準地価などがあります。それぞれ何が違うのかを、簡単に説明しておきましょう。
まず「公示地価」は国が調査主体となるもので、毎年1月1日時点の「標準地」と呼ばれる土地の1平方メートルあたりの地価を示します。発表時期は毎年3月下旬です。
そして「基準地価」は、都道府県が毎年7月1日時点の「基準地」1平方メートルあたりの地価を示しています。
いずれも土地の値段を示すのは共通です。
ただ、その役割や基準日、発表時期、対象地域などに違いがあります。
公示地価は、売り急ぎや買い急ぎといった特殊事情がない、正常な取引環境下で形成されるべき地価を示しています。全国の土地取引の指標となる地価であり、公共事業で必要とされる土地の取得価格の基準になります。
基準地価は、公示地価を補完する役割があって、調査対象地域も公示地価の約2万6000カ所に対して、約2万1000カ所です。完全に重複するわけではありませんが、発表されるタイミングがその年の公示地価発表から半年後ということもあり、両者を比較することによって、半年間の地価の傾向を把握できます。
そして路線価ですが、これは国税庁が調査主体ということもあり、相続税や贈与税の額を算出するために作成されている地価です。相続財産に不動産が含まれている場合、あるいは不動産を贈与された場合には、その評価額に応じて税金がかかってきます。路線価はそれを算出するための地価であり、基本的には公示地価の8割程度を目安に設定されています。
不動産は「一物四価」、あるいは「一物五価」と言われることもあります。
一物四価は、前出の公示地価と路線価に、固定資産税評価額と実勢価格加えたもの。一物五価は、一物四価に基準地価を加えたものです。
ちなみに固定資産税評価額は、各市町村が3年に1度、1月1日時点の地価を算定したもので、同時期に土地、家屋などの固定資産を所有している人は、その資産価値に見合った税額を、その資産が所在する地町村におさめる必要があります。もちろん賃貸暮らしの人は、土地や家屋にかかる固定資産税の支払義務はありません。