全世界株式とS&P500、今後の見通しは?

 

Q. 全世界株式とS&P500、今後の見通しは?

Ans.
当面のリターンはS&P500が優位か。どちらに投資するかは「当面は米国株が最強」と考えるか、「ある程度の分散は必要」と考えるかによる。
「つみたて投資or一括投資」と同様、「どんなリスクを取りたいかor避けたいか」しだい。

今後はどうでしょうか。日米欧を中心とする西側経済圏と中国・ロシアを中心とする東側経済圏の分断が懸念される中、トランプ米大統領が中国をはじめ新興国とどう向き合うか、高い経済成長が確実視されるインドの出方が不透明なことなど、国際情勢の先行きは予断を許しません。

とはいえ、世界中から優秀な人材が集まるアメリカのハイテク産業がそう簡単に弱体化するとは考えにくく、高いイノベーション力を背景に今後も新たな成長企業・成長産業が登場すると考えるのが自然でしょう。

政治的な対立はエスカレートするかもしれませんが、経済や株価の力強さという意味では、少なくともリターンはS&P500が全世界株式を少し上回ると想定しています。私と同じように考える人はS&P500を選択することになります。

一方、アメリカといえどもいつ何が起きるかわからないし、S&P500のリターンが長期的に全世界株式を上回る保証もないので、ある程度の分散が必要だと考えるなら、全世界株式を買えばいいでしょう。要は「つみたて投資か一括投資か」と同じで、「どちらのリスクを取りたいかor避けたいか」に尽きるのです。

 

全世界株式を買えば投資資金の約6割が米国株で、残りは世界中に分散投資できますが(図3-11)、結果的にS&P500のリターンが全世界株式を上回った場合の機会損失リスクを取ることになります。対して、米国“一極集中リスク”を承知でS&P500を買うのもいいでしょう。いずれにしても資産運用において将来の多くは不確実です。国際情勢や各国企業の状況が変われば、株価指数の優位性も逆転しうるものです。短期的な値動きに目を奪われることなく、時代の大きな流れにアンテナを張り、状況変化に応じて投資先を決めることが何より肝要です。

●第2回は【実はバブル高値より6割高い? “身の丈”日本株に投資先として再評価の兆し】です。(5月28日に配信予定) 

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