これからは私も通う
「お兄ちゃん」
静子が小さく呼びかけると、浩平が振り返る。
「……これからは私も通うよ」
「えっ、でも大変じゃないか? 仕事だって……」
「隣町だし、通えない距離じゃないよ。介護休暇とか使えば、会社のほうも何とかなると思う」
「無理、してないか?」
「うん、大丈夫。今まで任せっぱなしでごめん。私もできるだけ、この家で、お父さんと一緒に過ごしたい」
浩平の顔に、驚きと、そして少しの安堵が浮かんだ。
「ありがとう、静子。本当に無理しない範囲でいいからな」
静子はうなずいた。たとえ完璧にはできなくても、できることをやろう。父がこの家で、母と過ごした日々を感じながら、穏やかに生きていけるように。