新中計を公表、3年で経常益820億円積み増し 株主還元は配当性向と下限を新設
さらに長期の見通しも確認しましょう。住友林業は2025年2月に新しい中期経営計画を公表しました。2030年12月期に経常利益3500億円を目指す長期ビジョン(ミッション・ツリーイング2030)の第2段階にあたり、2027年12月期を最終とする3カ年計画です。
計画では各年度で目標が設定されました。経常利益は最終的に2024年12月期比で820億円の増益となる2800億円を目指しますが、うち今期(2025年12月期)の貢献は小さく、後半に伸びる想定です。建築・不動産がけん引役で、3カ年で775億円の経常増益を見込みます。これを実現するため、米国を中心に3000億円を販売用不動産の取得に投じます。
【中期経営計画の主な財務目標】
中期経営計画では新しい株主還元方針にも言及しました。期間中は配当性向30%以上を基本とし、かつ下限配当として1株あたり150円が設定されています。従来は数値目標がありませんでした。また、下限配当の150円はこれまでの実績を上回る水準です。具体的な目標の公表と株主還元の引き上げは投資家に好感されそうです。
【住友林業の1株あたり配当金】
・2021年12月期:80円(配当性向17.5%)
・2022年12月期:125円(同23.0%)
・2023年12月期:125円(同24.8%)
・2024年12月期:145円(同25.5%)
・2025年12月期計画:182円(同30.3%)
出所:住友林業 中期経営計画
株主還元の強化は自己資本利益率(ROE)の改善にもつながります。住友林業のROEは2021年12月期の20.2%をピークに低下が続いていました。主因は利益の拡大に伴う自己資本の増加です。そして、配当金は自己資本を減少させます。このため、配当金の増加はROEを向上させる効果があります。
住友林業の計画は、株主還元と利益の拡大を同時に目指すものです。計画どおりに進捗すれば、株式の価値が向上し、株価は上昇に転じるかもしれません。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)