楽天証券の投信売れ筋ランキングの2025年4月のトップ6は前月と同じになった。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」をトップに、第2位以下は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)、「楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド」、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」、「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド」、「楽天 日本株4.3倍ブル」と続いた。前月第7位の「iFreeNEXT FANG+インデックス」が第9位に後退し、第8位だった「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」と第9位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」がランクを切り上げただけで、ランキングはほとんど変わらなかった。

 

◆「FANG+インデックス」が敬遠された理由は?

楽天証券の売れ筋ランキングで4月に唯一の変化になった「iFreeNEXT FANG+インデックス」のランクダウンは、同ファンドの組み入れ銘柄に関するイメージが先行したネガティブな反応によるものと考えられる。同ファンドの組み入れ上位銘柄は、「アップル」「メタ・プラットフォームズ」「アマゾン」「マイクロソフト」「ネットフリックス」「クラウドストライク」「サービスナウ」「アルファベット」「エヌビディア」「ブロードコム」といった米国を代表するハイテク大型株だ。4月2日に発表された米政権の「相互関税」政策によって米国のハイテク株を中心に4月3日、4日と米国をはじめ主要国の株価が急落した。その下落が基準価額に反映される4月4日には同ファンドは前日比7.8%安、翌営業日の4月7日にも5.8%安と2営業日連続で大きな下落になった。わずか2日で基準価額が13%も下落した記憶がその後も波乱含みの展開の中で敬遠される理由になっていったと考えられる。

ただ、4月上旬の下落局面では、多くの株式ファンドが急落している。「iFreeNEXT FANG+インデックス」と同様に、代表的なインデックスファンドである「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は4月4日と7日の2営業日で11.7%安、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」も同10.3%安と2営業日で2ケタのマイナスになった。ただし、関税が発動された影響を受けた4月9日の基準価額は2025年3月末比で「iFreeNEXT FANG+インデックス」はマイナス12.7%と4月7日よりもやや回復した水準だった。これは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がマイナス13.2%、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」がマイナス12.8%だったことと比較すると、「iFreeNEXT FANG+インデックス」の方が3月末比での下落率はわずかながら軽微だったことを表している。

そして、米政権が「相互関税」の国別の上乗せ関税について「90日間一時停止する」すると発表したことで、4月10日以降の基準価額は大きく反発することになった。この戻り相場において、「iFreeNEXT FANG+インデックス」の強さが際立つ結果になった。関税の「90日間一時停止」を受けて株価が急反発した結果によって4月10日の基準価額は「iFreeNEXT FANG+インデックス」が前日比14.8%高となり、これは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の7.3%高、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の10.7%高を大きく上回った。その後も「iFreeNEXT FANG+インデックス」の戻りは大きく、4月末の基準価額の水準は3月末水準を上回るものになった。これは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が3月末水準に対して5%程度のマイナス圏にあることとは大きな違いといえる。

それでも投資家の行動としては、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」については購入が安定的に継続され、「iFreeNEXT FANG+インデックス」への購入意欲は衰えた。ひとつには、「iFreeNEXT FANG+インデックス」の価格変動の大きさに抵抗を感じるのだろう。

価格が上昇する局面ではより大きく上がることは魅力になるのだが、反対に下落する局面では代表的なインデックス以上に下落する恐れがある。米国の関税政策が米国経済にとってマイナスの影響が大きいと言われる中では、価格変動率が大きなファンドへの投資は控えられる傾向が強まるだろう。もう一つは、価格が大きく戻したがために、損切りでも利益確定でも解約(売却)しやすかったという側面があるだろう。市場が不安定な時には、価格が上昇しているものに売りが出やすいものだ。

今後は、「iFreeNEXT FANG+インデックス」の組み入れ銘柄が象徴している「AI(人工知能)」の市場が、どこまで成長するかということへの期待感がポイントになるだろう。これまでは課題といえる期待感で株価が割高な水準にまで買い上げられてきたが、その高い期待感に反さない業績が続くかどうかを見極める局面になってきている。四半期ごとの決算に一喜一憂するような展開となりそうだ。