今後のポイント
最後に当面のポイントを見ていきます。4月4日に米国の雇用統計が、そして4月10日に米国の消費者物価指数が発表されました。一連の経済指標を見るに、米国のインフレはかなり減衰しつつある状況にあります。ですが、足元では経済指標よりも関税が株式相場に与える影響が強くなっており、ドル建ての資産もリスク資産のような扱いになっています。この為、関税をめぐる株式相場の動揺が続く間は、米国のトリプル安が続く可能性が高いでしょう。

S&P 500の動きを振り返ります。割高感の修正はかなり進んでいます。たとえば、4月7日にS&P500 が4900割れまで下がった場面では、予想PERが過去平均の18倍ぐらいまで下がって割高感の是正が進みました。
ただ、その後、関税上乗せの90日間延期というトランプ大統領の方針転換により株価が大きく上昇しました。現状は予想PERが19倍台まで上がっています。つまり割高感の修正が中途半端な状態で止まった状況です。
米国では4月14日週あたりから、決算発表が本格化します。決算発表で見通しの下方修正が相次ぐことになれば株の一段安も十分に考えられるでしょう。警戒すべき動きです。
たとえば、4月9日にデルタ航空は業績見通しを撤回していますが、これは考えてみれば当然です。多くの国との関税交渉がはじまるわけですから前提が全く決まらない中で、業績の見通しは出せません。同様のケースが実際にはかなり多く出てくるのではないかと考えられます。ですから株については、神経質な相場が続くのではないかと思います。
為替についても考えてみましょう。金利差はしばらく機能不全になるでしょう。ドル円の水準、あるいは方向感を見定めるのは難しい時間帯が続くと思います。いずれにせよ円は決して強くはないもののドル安相場が続くことになればドル円も追随するでしょう。ドル円140円割れは、射程圏内に入ってしまっていると思います。問題はドル円の水準ではなくドル安が140円割れで止まるのかどうかになってくるでしょう。
一番シンプルかつ楽観的なケースでいけば、悪材料手尽くし感によって米国の株安に歯止めがかかるかもしれません。そうなればトリプル安にも歯止めがかかり、ドル円も140円あたりで下値固めとなることが十分期待できます。ですが、現状ではそこで止まるかどうか非常に心配な時間帯が続くのではないかと見立てています。
―――――――――――――――――――――――――
「内田稔教授のマーケットトーク」はYouTubeからもご覧いただけます。