◆史上最高値を更新した「ゴールド」の行方

「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」が第7位にまで順位を上げた。これは、2月24日にNY金先物が2963ドルの史上最高値を付けた動きを反映したものと考えられる。2024年末日より12.20%高い水準だ。2024年の1年間で27.47%値上がりしてから、わずか2カ月で約12%も上昇した勢いの強さが、今後の上昇を期待させた結果といえる。しかし、NY金先物価格が2月28日には2848ドルまで下落してしまった。高値からの下落率は3.87%程度ではあるが、価格が上昇してきた後だけに、価格のブレ幅が大きくなってきている。

そもそも金価格の上昇をどのように考えればよいのだろうか? ゴールドに対する投資を分散投資の手段として重視しているピクテ・ジャパンは2025年1月9日に金価格の動向についてのレポートを出している。まずは、2020年以降の金価格の推移(ロンドン市場・米ドルベース)を紹介し、2020年がプラス24.6%、2021年マイナス4.3%、2022年はプラス0.4%、2023年はプラス14.3%、2024年はプラス25.5%と2年連続で2ケタ上昇した動きを振り返った。この価格上昇の背景にあるのが、2020年のコロナ・ショックでの世界的金融緩和があった。2023年にかけて急速な金融引き締めがあったが2024年9月から再び金融緩和策が取られ始めた。2024年の金価格の上昇と米国の利下げは密接に関係しあっている。

今後の動きはトランプ政権の米国の経済・外交政策のかじ取りによって波乱含みだ。「強硬かつ保護主義的な姿勢が想定される共和党政権下の外交政策は、地政学的な不確実性を高める要因になる」とし、その結果として株式市場や債券市場が不安定になれば、「安全資産」として金に資金が流れ込む可能性がある。また、第一次トランプ政権にあったような大幅な減税(トランプ減税)や軍事費の支出拡大など拡張的な財政運営を行えば、財政悪化懸念が高まって通貨価値が下落し、それが金価格の上昇につながる可能性もある。あるいは逆に保護主義政策のために米国のインフレが再加速するようなことになれば、FRBが利上げに動き、そのために金価格が下落するというリスクもある。さまざまな不確定要素が錯綜(さくそう)しているが、いずれにしても、不安定化している世界情勢が金への需要を高めることにつながりそうだ。

執筆/ライター・記者 徳永 浩